ロイター通信は28日、中国政府の不興を買ったHSBC（00005）が、中国の国有企業から取引を避けられていると報じた。中国国有企業とHSBCの社員の話として、原因は香港民主派への弾圧や、2018年に華為技術（ファーウェイ）の孟晩舟副会長が米当局の要請によりカナダで逮捕された事件など、政治的に微妙な問題に対するHSBCの姿勢に中国政府が不満を募らせたことにあるとした。

　ロイターによると、国有鉄鋼大手の中国宝武鋼鉄集団は2020年11月に上海で開いた財務部門の研修会で、「出入り禁止」にした銀行60行を列挙したスライドをみせた。このブラックリストに収載された銀行のほとんどは経営が苦しい中国の銀行だったが、リストの最後にあったのは唯一の外資銀行であるHSBCだった。研修会の参加者によれば、中国宝武鋼鉄集団の幹部は「こうした銀行はコマーシャルペーパー（短期社債）の引受先にしない」と説明した。また、発電所建設を手掛ける国有企業、中国能源建設集団の経営陣はファーウェイ事件の後、社員にHSBCを徹底的に避けるよう電子メールで指示したという。

　HSBCはロイターに対し、顧客についてコメントしないとした上で、「ロイターが記述したような当行の顧客との関係は認識していない」と反論。「中国経済が新型コロナウイルスのまん延から立ち直るにつれ、当行が維持してきた顧客との強い関係は新たな取引をもたらし、業務は拡大している」と述べた。HSBCはさらに「あらゆるレベルの中国当局担当者と定期的に」接触していると説明した。