香港株式市場は4月半ば以降、上向きに推移しており、ハンセン指数は21日に続伸。終値は23827.78ポイントと、24000ポイントの大台に接近した。香港銀行間取引金利(HIBOR)の全面的な低下が示唆する香港ドル資金の潤沢さや、車載バッテリーの世界最大手、寧徳時代新能源科技(
03750)の上場後の急伸などが楽観ムードの背景。こうした中で目立つのが一部消費銘柄の株価の好調だ。中でもIPキャラクターグッズなどのトレンド玩具に代表される「遊」関連、ティードリンクチェーンやスナックなどの「食」関連、スキンケアなど「美容」関連、金銀宝飾品の「アクセサリー」という4分野から成る「新型内需」株が買われる展開となっている。
「遊」ではブロック玩具大手の布魯可集団(
00325)とトレンド玩具のポップマート(
09992)が年初から165%高、132%高と、極めて好調。ポップマートは21日に216HKドルに到達し、再び上場来高値を更新した。「食」の領域においては、ドリンクショップチェーン、蜜雪氷城(
02097)が15日から20日までの3営業日にそれぞれ前日比6.3%高、8.5%高、4.5%高と推移し、20日に上場来高値を更新している。
◆トレカ最大手KAYOUのIPOで玩具銘柄にプラス効果波及か
『香港経済日報』は最近の香港市場での人気銘柄の特徴として、「テーマ性があり、利益成長ストーリーが魅力的な銘柄」を挙げ、「新型消費」がこれに合致すると指摘している。中でもIPキャラ商品のポップマートのテーマ性が極めて高く、布魯可集団も同様。同社は他社IPの「トランスフォーマー」や「ポケモン」とともに、「Magic Blocks」など自社IPキャラクターのブロック玩具を展開する
感情的価値が高いトレンド系玩具の人気もあり、少子化が進む中にあっても、中国玩具市場の先行きは有望だ。米フロスト&サリバンによれば、24年の1161億元規模から28年には1655億元へ、年率平均9.3%の成長を遂げる見通しという。
ほかに、間接的なプラス材料が波及しやすいのも「新型内需」株の特徴。例えば類似銘柄のIPOや、「港股通(ストックコネクト)」への組み入れ、株価指数への新規採用などが、各銘柄の株価の上昇につながりやすい。香港の株価指数を運営するハンセン・インデックシズ社は先週、6月9日付の指数構成銘柄の入れ替えを発表する中で、布魯可集団、古茗控股(
01364)、蜜雪氷城をハンセン総合指数に採用するとしており、この3社は今後、「港股通」に組み込まれる見通しとなった。そうなれば、本土資金による旺盛な買いが期待できる。
また、ウルトラマンシリーズなどを展開する中国のトレーディングカード最大手KAYOUや、スナックなどの食品通販を手掛ける三隻松鼠、宝飾品の周六福珠宝は6月中にもIPOを行うとみられ、「新型内需」銘柄にプラス効果が波及する可能性が高い。中でも注目度が高いのはKAYOU。トレカビジネスは「現金印刷機」と言われるほど利益率が高く、同社の24年の売上高は前年比278%増の101億元。調整後利益は378%増の45億元に達した。IPOでは個人投資家の熱狂的な反応を得る可能性があり、ポップマートや布魯可集団の一段高もありそうだ。
◆美容の上海上美化粧品や宝飾品の老鋪黄金も有力

一方、美容分野に属する化粧品・スキンケア部門では、「韓束」ブランドを展開する上海上美化粧品(
02145)が有望。「抖音」(中国版TikTok)などECプラットフォームを通じたブランド認知度の強化に成功し、24年のオンラインGMV(流通総額)と成長率で、国産化粧品ブランドの2位、1位を獲得した。中国ではコスパ重視、自己満足型の消費傾向が鮮明となる中、国産ブランド志向が高まっており、上海上美化粧品などの地場系には有利なビジネス環境。同社利益はここ2年で急成長したが、市場コンセンサス予想では、2024−27年も年率平均24%の増益を確保する見通しという。
金銀宝飾品の分野では、ゴールドジュエリーのデザイン・製造・販売を手掛ける老鋪黄金(
06181)が注目銘柄。中国の伝統的なデザインをモチーフとした「ヘリテージゴールド」を主力とする同社も、自己満足志向、個性重視型の消費トレンドの恩恵銘柄であり、24年の売上高は前年実績の2.7倍、純利益は3.5倍に達した。中信証券は25年の売上高と利益について、さらに前年の2.3倍、2.4倍を予想している。
老鋪黄金の売上高ベースの国内シェアは2%で、業界7位。24年末の自営店舗数は36に過ぎず、この先の販路の拡大余地が大きい。証券各社の直近のリポートを見ると、同社に対しては強気見通し一色。中でも野村インターナショナル、シティグループ、ゴールドマン・サックスは目標株価を999HKドル、979HKドル、976HKドルの高水準に設定している。