7月の招福銘柄は、ハンセン指数採用の主力銘柄の中から、国有企業銘柄を中心に選んだ。国有企業銘柄は、企業価値向上に向けた政策的な取り組みや、政府系資金による買い支えにも注目が集まっている。まず華潤グループのビール会社である華潤ビール(
00291)、同じく華潤グループの電力会社である華潤電力控股(
00836)の2銘柄をピックアップ。ほかに、石油銘柄のCNOOC(
00883)、乳製品メーカーの中国蒙牛乳業(
02319)、非鉄資源銘柄の紫金鉱業集団(
02899)の3銘柄も選んだ。今月はこの5銘柄に注目したい。
■華潤ビール(00291):夏場の需要期を迎え、ビール消費の拡大に期待
株価:26.25HKドル(6/28終値)
【中国最大のビール会社】夏場の需要期を迎え、消費拡大への期待が株価の支援材料となりそうだ。天候不順や白酒事業の先行き懸念などから株価は足元で軟調に推移し、6月は月間で16%安と大幅に下落。約5年半ぶりの安値水準まで落ち込み、バリュエーション面では割安感が強まってきている。経営陣も先行きに対しては楽観的な見方を示しており、ビール販売も引き続き堅調。7月下旬にはパリ五輪も開幕し、ビール消費が活性化すれば業績期待から底打ち反発が期待できそうだ。24年通期業績に関しては、ファクトセットのコンセンサス予想で16%程度の増益が見込まれている。
■華潤電力控股(00836):需要拡大と「国家隊」資金が材料
株価:23.95HKドル(6/28終値)
【華潤グループ傘下の大手電力会社】需要の拡大と政策の追い風を材料に買いが入りそうだ。夏季は例年、電力消費が増える上、人工知能(AI)の利用拡大に伴い消費量が長期的に伸びていく見通し。政策面では「国家隊」と呼ばれる中国政府系資金による買い支えが期待される。すでに国有資本運営会社である中国国新控股の傘下投資会社が6月19日、「中証国新港股通央企紅利指数」のETFを買い入れたと発表した。華潤電力控股を含めた同指数の構成銘柄は、中国の中央政府が管轄する国有企業(中央企業)の傘下にある。また、中国政府の資本市場政策の下、中央企業系の銘柄が「高配当株」として選好されそうだ。
■CNOOC(00883):政府系マネー購入のETFでウエート上位、3中全会にも期待
株価:22.40HKドル(6/28終値)
【中国の石油開発大手】国有企業の価値向上につながる動きが相次いでいることが追い風。今年1月には中国国務院が中央企業幹部の人事評価に上場企業の時価総額基準の導入を推進すると発表しており、経営面で株価上昇への配慮が強まる見通し。6月19日には「国家隊」と呼ばれる政府系マネーが高配当の中央企業などで構成されるETFを購入したことで、同ETFのウエート上位にあるCNOOCにも注目が集まった。一方、7月15−18日に中国共産党の重要会議「3中全会」が開催されるが、過去の3中全会では国有企業改革の推進などが主要議題に上っており、注目材料となりそうだ。
■中国蒙牛乳業(02319):良好な業績見通しと割安なバリュエーションに着目
株価:14.00HKドル(6/28終値)
【中国の乳業大手】良好な業績見通しとバリュエーションの割安さに着目した。市場コンセンサス予想によると、24年6月中間決算は売上高が前年同期比2%増の521億1700万元、純利益が2%増の30億8800万元と小幅な増収増益だが、24年12月本決算では売上高が前年比4%増の1027億500万元、純利益が15%増の55億4900万元となり、売上高と純利益がともに過去最高を更新する見通し。売上高が初めて1000億元の大台に乗り、2桁増益達成が見込まれる。一方、バリュエーションは24年予想PERが9.4倍にとどまり、競合の内蒙古伊利実業集団(
600887)の11.8倍に比べて割安。
■紫金鉱業集団(02899):銅相場下落や増資で株価低迷も懸念材料は織り込み済みか
株価:16.48HKドル(6/28終値)
【中国の大手金鉱会社】同社は銅の売上比率も高く、銅相場の下落などを背景に足元で株価が軟調だが、懸念材料はほぼ織り込まれたとみる向きが多い。銅相場の下落は中国の需要低迷が要因とされているが、在庫や加工企業の活動といったデータにはすでに改善の兆しが出ている。AIなどによる電力消費の増加を受けた電力インフラへの投資の拡大、電気自動車の普及、中国の景気支援策などが銅需要を下支え、相場は在庫解消が進めば反転するとみられる。また、同社が6月に行った第三者割当増資などによる資金調達も株価を一時的に押し下げたものの、バランスシートの質を大幅に改善でき、今後の買収に向けた準備だと評価する声もある。