米オープンAIが開発した対話型の生成AI「ChatGPT(チャットGPT)」の登場と3月のバージョンアップで、世界のAI市場は新たなフェーズに突入したが、中国でも有力テック企業による生成AIサービスの発表がここに来て加速している。国内の検索最大手である百度(
09888)が3月16日に中国版チャットGPTこと、「文心一言(ERNIE Bot)」を発表して間もなく、中国を代表する巨大テック企業であるテンセント(
00700)、アリババ集団(
09988)、ファーウェイ(華為技術)が相次ぎ、新たな生成AIサービスの投入を発表した。
中でもファーウェイがまもなくリリースする「盤古」は、百度の「文心」に続く“中国版チャットGPT”となる見込み。テンセント、アリババ、さらにはTikTokのバイトダンスも、中国版チャットGPTの投入を準備しているとの情報が伝わっており、中国での本格的に開発競争が幕を開けた格好だ。
巨大テック企業は基礎技術への研究開発分野における過去の積み上げや、自前のAIプラットフォームの存在という点で、やはり生成AI分野でも有利。市場では「AI」テーマの下、改めてテック大手に対する注目度が高まっている。また、AI技術の発展は広範な分野で、新たな商機を生む見込み。徳邦証券は電子やパソコン、メディア・インターネット、医薬品・医療、家電、建築などの各セクターに、「+AI」の投資チャンスが生まれるとの見方だ。

◆中国の広義AI市場、26年に2兆元超えか
画期的なAIチャットボット、チャットGPTの登場は世界のAI市場の拡大を加速させる見通し。中国のAI市場に関しては、現時点で年率20%を超える伸びが見込まれている。IT調査会社、艾瑞諮詢(iResearch)の予測では、中国のAI中核産業の規模は21年の約2000億元から26年には6000億元超へ、年率平均25%弱のペースで拡大する。周辺産業を含めたAI市場の規模は、26年には2兆元を超える見込み。年率22%近い伸びが予想されるという。
最近では、いち早く「文心一言」を発表し、先発者優位を得た百度が、続いて企業向けのワンストップ型大規模プラットフォーム「文心千帆」を発表。AIの商用化に本格的に踏み出した。百度に対抗するライバル各社の生成AI投入の動きも、3月後半から一気に目立ち始めている。
◆ファーウェイ、自前の対話型AI「盤古」をまもなくリリース
アリババ集団では、最先端技術の研究機関「アリババDAMOアカデミー(達摩院)」がAIモデルコミュニティー「魔塔」上で、テキストから画像を生成する大規模モデルをリリースすると発表。続いてテンセントも創作支援型の生成AI「騰訊智影」の投入を正式に発表し、同時にチャットGPTタイプの対話型AIの開発を進めていることを明らかにした。
一方、こうした3大テック企業の動きに割って入ったのは、未公開の有力テック企業であるファーウェイ(華為技術)。NLP(自然言語処理)、CV(コンピュータービジョン: コンピューターで画像・動画データを解析し、何がどう映っているのか割り出す技術)、マルチモーダルモデル(多種の情報を利用した高度処理)、科学計算モデルなど複数の大規模モデルを組み合わせた独自の対話型AIサービス「盤古」を近く投入するとしている。このファーウェイのサービスは“中国版チャットGPT”とされており、百度の「文心」と真正面から競合する可能性がありそうだ。
今のところ「盤古」のリリース時期などは明らかにされていないが、まずは5月に発売する新型スマートフォンにこの技術を応用する予定。好きな画像を音声で検索できるようにするという。
なお、3月の香港株式市場では、「中国版チャットGPT」で先行した百度をはじめ、アリババ集団、テンセントなどの株価が軒並み10%を超えて値上がりした。『香港経済日報』によると、この「BAT」3社のうち、テンセントの武器は「微信」と「WeChat」(海外版)で計13億人(アクティブユーザー数)を超える圧倒的な顧客基盤。半面、多角経営のアリババはAI技術を広範に応用できる可能性があり、AIの発展により、最も大きな恩恵が期待できる銘柄の一つになるという。
一方、百度の強みは半導体チップ、フレームワーク、モデル、アプリケーションの4層からなるフルのAI技術アーキテクチャ。IDCなどの調査では、同社はAIパブリッククラウド、対話型AI、AI工業品質検査という3つの領域で、国内トップシェアを握るとの結果が示されている。