5月の招福銘柄は、上海の都市封鎖(ロックダウン)が長期化で経済活動の停滞が警戒されるなか、比較的ディフェンシブ性の高い銘柄を中心に選んだ。まずは新型コロナの「第5波」を脱して行動制限緩和に動く香港から、鉄道運営会社の香港鉄路(
00066)を選択。中国の医薬品銘柄からは中国生物製薬(
01177)、上海復星医薬(
02196)の2銘柄を選んだ。このうち上海復星医薬は新型コロナワクチン「復必泰」の承認も期待される。九興控股(
01836)は売り上げの半分を北米で稼いでおり、東南アジアの各国に製造拠点を置くなどリスクも分散している。蔚来集団(
09866)についてはロックダウンの影響が出ているものの、今後の感染状況の改善を先取りして選んだ。今月はこの5銘柄に注目したい。
■香港鉄路(00066):香港で行動制限緩和、公共交通機関の利用増で業績回復へ
株価:41.85HKドル(4/29終値)
【香港の鉄道運営会社】5月3−4日のFOMCでの大幅な利上げの観測、こう着状態のロシアとウクライナの戦争、中国・上海のロックダウンの長期化など株式市場への強い逆風が続くと予想されるなか、ディフェンシブ銘柄を選定した。香港政府は新型コロナウイルス流行の「第5波」を受け、住民に対する行動制限を強化したが、3月をピークに新規感染者数は減っており、4月下旬には行動制限を緩和した。住民の移動が増えれば公共交通機関の利用に反映され、香港鉄路の業績回復に寄与するとみられる。実際、市場予想では22年12月本決算の純利益は前年比48%増の141億5000万HKドルと大幅な増益が見込まれている。
■中国生物製薬(01177):決算好調も株価は軟調推移、底打ち反転に期待
株価:4.15HKドル(4/29終値)
【中国の総合医薬品メーカー】21年12月本決算の発表後に株価は大きく下落しているものの、決算内容自体は純利益が5.3倍に拡大するなど好調。コロナワクチの開発を手掛ける関連会社シノバックの利益貢献に加え、発売から5年以内の新薬販売も大きく伸びた。決算発表と同時に最大10億HKドル規模の自社株買い計画も発表。株価が軟調に推移していることもあり、22年予想PERは12倍、予想PBRは1.7倍とバリュエーション面で割高感は薄れている。オミクロン株に対応した新型コロナワクチンの臨床研究も始まっており、株価の底打ち反転に期待したい。
■九興控股(01836):米国経済の成長が業績に反映へ、受注は堅調
株価:8.30HKドル(4/29終値)
【靴のOEM・小売会社】世界景気の先行きが不透明ななか、米国経済の成長を背景に業績が拡大するとの思惑買いが入りそうだ。売上高の半分を北米で稼ぐ事業体制が強みとなる。製造拠点を中国のほかにベトナム、インドネシア、フィリピン、バングラデシュに置いており、中国のロックダウンによる物流の混乱が事業全体に及びにくいことも評価できる。株価は今年4月1日の取引時間中に7.2HKドルまで下げ、昨年9月下旬以来ほぼ6カ月ぶり安値を付けたが、以後は次第に下値を切り上げている。OEM受注は堅調で、2022年1−3月期の売上高(部門間取引を除く)は前年同期比26.3%増の3億8330万米ドルに達した。
■上海復星医薬(02196):mRNAワクチン承認に期待、1−3月期決算は堅調
株価:33.90HKドル(4/29終値)
【復星集団の製薬会社】独ビオンテックからライセンスを得て臨床試験と承認申請などを展開するmRNAワクチン「復必泰」は中国で承認される可能性が伝えられており、実現した場合は株価の支援材料になりそうだ。中国で「復必泰」の第2相臨床試験が続いているが、EUが中国産ワクチンを承認していないこともあり、「復必泰」の審査が難航していたとみられる。一方、ここ最近国内の感染状況が深刻化し、事態打開のため、当局はより効果の高い「復必泰」の採用に傾いているとの報道もある。業績面では、1−3月期決算が45%減益となったものの、金融資産の評価損が減益の主因。この要因を除いた純利益は22%増と堅調。
■蔚来集団(09866):上海の感染一段落で株価反発に期待
株価:144.00HKドル(4/29終値)
【中国の高級EVメーカー】新型コロナの感染拡大を受けてロックダウンが続く上海市に拠点を置くことから、株価は直近1カ月で15%近く下げたが、感染が一段落すれば株価も反発が期待できそうだ。一定条件の下、生産再開が認められる重要企業リスト(ホワイトリスト)にも入っており、4月下旬までに技術開発部門のスタッフの約25%が復帰した。新型コロナの影響で縮小した消費の回復促進を目的に中国国務院が発表した「意見」では、各地区の自動車購入の規制緩和や農村での新エネルギー車の購入支援措置の導入などが盛り込まれており、今後の販売を押し上げる可能性もありそうだ。