香港株式市場ではここ1カ月余り、不動産管理サービス銘柄の勢いが際立っている。一部過熱感が指摘されているにもかかわらず、アウトパフォームの勢いは衰えず、先週末25日には全体相場の調整とは逆行する形で、永昇生活服務集団(
01995)が前日比7.1%急伸。新城悦控股(
01755)と奥園健康生活集団(
03662)も2.8%、1.7%上昇し、そろって上場来高値を更新した。不動産管理銘柄の魅力の一つは、単なるマンション管理業務にとどまらず、コミュニティー内での幅広い生活サービス分野への事業多角化の可能性。ほかにコスト圧力が相対的に小さく、資金需要が限定的であることも、セクター全体の強み。マクロ経済の減速に対して抵抗力が強く、先行きの利益見通しが明確であるという点からも極めて評価が高く、これが最近の株価急伸を支える要因となっている。
不動産管理セクターの有力企業は、万科物業発展、彩生活服務(
01778)、碧桂園服務(
06098)、龍湖物業服務、緑城服務(
02869)、雅居楽雅生活服務(
03319)などで、大半が有力デベロッパーの傘下。業績拡大ペースは基本的に、親会社であるデベロッパーの販売成績に左右されやすいものの、すでにグループ内事業だけにとどまらず、第三者業務も拡大傾向にある。今後はさらに管理物件が多様化し、ショッピングモールや公共物件など、非住宅分野のウエートが高まる見通しだ。
◆公共物件管理事業に成長余力、市場規模は推定4000億元
不動産管理セクターに関しては最近、「公共物件の管理サービス」という、相対的に目新しい市場の成長性が注目を浴びているが、そのきっかけの一つとなったのは、雅居楽雅生活服務が9月26日、中民物業および新中民物業の権益60%(総額20億6000万元)を取得すると発表したこと。取引完了後、雅居楽雅生活服務の管理物件面積は139%増の5億500万平方メートルに急増するが(買収分がうち2億9000万平方メートル)、それ以上に学校や医療機関、政府機関オフィスといった公共不動産向け管理事業への参入が高評価を得る形となり、同社株価は発表直後から急伸した。
UBSによれば、公共物件業務は不動産市況の変動による影響を受けにくい上に、利益率が相対的に安定しているのが強み。さらに参入障壁が高く、ブランドイメージにもプラスとなる。政府当局による民間への開放姿勢を受け、公共物件業務はこの先、新たな成長市場可能性が高く、買収機会も大きいという。関連市場の規模は推定4000億元(住宅管理市場は6080億元)。UBSは成長力などを理由に、不動産管理セクター全体に対して強気のレーティングを維持し、個別では雅居楽雅生活服務をトップピック銘柄としている。同社の目標株価を17.1HKドルから26.9HKドルに引き上げ、「買い」の投資判断を付与した。一方、最大手クラスの碧桂園服務に関しては目標株価を18.7HKドルから23.5HKドルに引き上げ、投資判断を「中立」としている。
管理物件の多様性という点ではほかに、永昇生活服務集団も注目銘柄の一つ。同社はオフィスやショッピングモール、工業パーク、医療機関、教育機関などの管理サービスを手がけ、19年上期には非住宅管理収入が1億6000万元と、売り上げ全体の22.5%を占めた。
◆6月中間期に中小銘柄が大幅増益、IPOも相次ぐ
なお、香港市場では9月末までの段階で、真っ先に碧桂園(
02007)傘下の碧桂園服務、雅居楽集団(
03383)傘下の雅居楽雅生活服務という大手2銘柄が買われる展開となったが、その後は中小銘柄が急伸する場面が目立つ。中小銘柄の好決算が際立ったためで、例えば永昇生活服務集団は19年6月中間期に前年同期比120%の大幅増益。新城悦控股と奥園健康生活集団もそれぞれ同115%、153%の利益成長を記録し、碧桂園服務(72%増益)、雅居楽雅生活服務(63%増益)を上回る勢いを示した。
また、最近では不動産管理銘柄のIPOが相次いでおり、銘柄選択の余地がさらに広がっている。10月には四川藍光嘉宝服務(
02606)とキン苑物業服務(
01895)が相次いで香港メインボードにデビューし、11月6日には銀城生活服務(
01922)が続く予定だ。こうした直近IPO銘柄もかなり注目度が高く、中でも急成長ぶりが際立っているのが四川藍光嘉宝服務。管理対象物件の総面積(6月末時点で6330万平方メートル)はここ2年にわたり、毎年倍増ペースを記録したという。他2社を見ると、銀城生活服務は江蘇省の不動産デベロッパー銀城國際(
01902)からスピンオフした管理会社。キン苑物業服務は本社所在地の河南省をはじめ、山東省、陝西省、四川省、江蘇省、北京、上海など、幅広い地域で管理サービスを手掛ける。