有力スマートフォンベンダーが相次いで新型機種の発表に動く中、スマホ関連銘柄が再び市場の焦点となり、21日の香港株式市場ではレノボグループ(
00992)、中興通訊(
00763)、小米集団(
01810)、舜宇光学科技(
02382)がそれぞれ11.9−4.7%急伸した。レノボグループの急伸は18年10−12月期決算(黒字転換)の上振れが主因だが、ほかに大手の新機種投入によるスマホ販売の回復期待が高まったことや、韓国サムスンによる5G対応スマホの発表に市場が反応した格好。5G時代の到来に対する投資家の熱視線が、中国鉄塔などの設備銘柄だけでなく、スマホ銘柄、関連部品銘柄にも向き始めた。
まず中国国内では20日、小米集団がトリプルレンズカメラを採用した新たなフラッグシップスマホ「小米9」(Mi9)シリーズを発表した。クアルコムの最新プロセッサ、スナップドラゴン855を搭載し、ディスプレイは6.39インチAMOLEDタイプ。5世代型の光学式画面内指紋認証センサーを備える先端モデルとなる。
シティグループは、「小米9」シリーズのスペックや高コストパフォーマンスに目を向け、価格設定を含む同社戦略を前向きに評価。中国国際金融や野村インターナショナルも、「小米9」の競争力を高く評価し、発売後の売れ行きに対して楽観見通しを示すなど、評判は上々だ。また、今回小米が注目されたのは、同時に製品価格を平均10%程度引き上げると発表したこと。アナリストらはこれをおおむね肯定的に受け止めている。
◆小米「3眼」、サムスン「6眼」採用が舜宇光学科技の追い風
一方、サムスンは同じく20日、米国で新型機種を発表した。その一つは注目の折り畳み式スマホ「ギャラクシー・フォールド」(販売価格1980米ドル)。折り畳み式は昨年10月、中国のベンチャー企業、柔宇科技が世界で初めて発表したが、同社に出し抜かれる形となったサムスンも、今回ようやくこれに続いた。「ギャラクシー・フォールド」はたためばスマホ(4.6インチ)、広げればタブレット(7.3インチ)として利用することが可能なタイプ。サムスンを猛追する華為技術(ファーウェイ)も近く、折り畳みモデルを発表する可能性が高いという。
サムスンはまた今回、5G対応のフラッグシップモデル「ギャラクシーS10」シリーズも同時に発表したが、その一つは5G対応の「S10 5G」(19年前半の発売予定)。これにより、早期の5Gサービスの開始に対する市場の期待が高まった。中国のスマホベンダーもすでに5G対応機種の投入を準備しているもようだ
また、「S10」シリーズの上位モデルは6つのレンズを搭載したタイプであり、トリプルレンズ式のアウトカメラに加え、インカメラレンズがさらに3つ。小米の新旗艦モデルのトリプルレンズ搭載と合わせ、今後のレンズ関連部品需要に対する強気見通しが広がった。中国のその他ブランドもこの先、小米集団によるトリプルレンズを採用に追随する可能性が高く、こうした趨勢は有力光学部品メーカーの舜宇光学科技の追い風となる。
◆中興通訊株が回復、「5Gサプライチェーン」に期待
舜宇光学科技の場合、18年本決算は前年比12−15%の減益となる見通しだが、投資家はすでに今後の製品需要の回復に目を向けており、同社株価は年初の安値水準(58.55HKドル)から約2カ月で60%を超えて反発。21日終値で94.35HKドルまで戻した。年初までの段階では製品需要の縮小や利益率の悪化懸念が濃厚だったが、証券各社の直近リポーをみる限り、かなり楽観見通しが目立つ。うちシティグループは同社がサムスン「ギャラクシー・フォールド」向けの主要カメラモジュールサプライヤーになると予想。製品の高度化と受注量の伸びが見込めるとし、目標株価124HKドルで「買い」を推奨している。
一方、新型機種を発表したばかりの小米集団に対しては、シティグループや野村インターナショナルが強気。シティは最新リポートでニューモデルの質や同社そのものの競争力を高く評価。目標株価16HKドルで、「買い」の投資判断を付与した。野村も新型機種を評価し、目標株価13HKドルで「買い」推奨を継続している。野村によれば、小米向けの主要部品サプライヤーは、舜宇光学科技のほか、サムスン電機、深セン欧菲光科技(
002456)、台湾の大立光電(ラーガン・プレシジョン)、瑞声科技(
02018)、立訊精密工業(
002475)、BYDエレクトロニック(
00285)、伯恩光学(BIEL)、深セン市匯頂科技(
603160)、Qテクノロジー(
01478)になるという。
また、21日の香港市場では中興通訊が急伸し、およそ8カ月ぶり高値をつける展開となったたが、これは5Gサプライチェーン(基地局からスマホまで)を全面的に手がける唯一の香港上場銘柄であることが再認識されたため。中国国際金融は18日のリポートで、中国国内における大規模な5Gネットワーク建設が、同社にとって直接的な追い風になると指摘。H株目標株価を22HKドルとし、「買い」推奨を付与している。