中国国内の天然ガス消費の加速を受け、このところ都市ガス銘柄の値動きが好調だ。最新統計によれば、天然ガス消費量の伸びは8月に前年同月比30.4%と、2カ月連続で年初来最高を更新。1−8月の累計でも前年同期比17.8%増の1504億立方メートルに上り、16年通年の前年比6.6%増から加速した。家庭向けの天然ガス消費の伸びがこの先、中長期的に天然ガス消費の伸びに寄与するとみられ、浙商証券は「天然ガス業界は黄金期を迎えた」との見方だ。その最大の恩恵が見込まれるのは都市ガス事業者。個別では、農村部市場の開拓などに強みを持つ中国ガス(
00384)に対し、強気見通しが優勢となっている。
中国の天然ガス消費は景気減速を受けた需要萎縮や原油安・石炭安による価格競争力の低下が響き、2014−15年に低迷したが、16年には原油高や石炭高、天然ガス・ゲート価格の引き下げを受けた価格競争力の高まりにより、需要が回復。17年に入ってからは需要の伸びがほぼ右肩上がりに推移している。その要因の一つは、生産活動の復調。JPモルガンによれば、工業顧客は天然ガス消費全体の4−6割を占めており、天然ガス消費と鉱工業生産伸び率とは極めて密接な関係にあるという(2005年−17年上期の相関指数は0.92)。ただ、それ以上に需要上乗せ効果が大きいとみられるのが、政府が推進する「煤改気」政策だ。
◆CO2排出へ「煤改気」推進、まずは北京周辺で燃料転換が加速
「煤改気」(あるいは「気代煤」)は都市部・農村部世帯の燃料を石炭から天然ガスに切り替えるというCO2(二酸化炭素)排出削減策。政府当局は天然ガス発展計画の中で、京津冀(北京市、天津市、河北省)、長江デルタ、珠江デルタ、東北部を重点に、「煤改気」を進める方針を策定した。その後、まずは京津冀エリアで天然ガスへの燃料転換が急速に進行している。第1段階として北京の30万世帯、天津の29万世帯、河北省の180万世帯、河南省の42万世帯などを対象に切り替えが実施されたもようだ。また、農村部でも同様に燃料転換が行われており、シティグループが「10月までに300万世帯で切り替えが完了した」と報告している。
住宅部門の天然ガス消費の拡大は、この先、消費規模の急拡大につながる見通しだ。中信建投によれば、「煤改気」世帯による天然ガス消費は2020年までの消費上乗せ分の9割を占める見込み(うち半分が京津冀エリア)。シティグループは「煤改気」の対象エリアがこの先段階的に広がるとみて、向こう3−5年で巨大な天然ガス消費市場が誕生するとみている。
◆「煤改気」のパイオニア、中国ガスに強気見通し
香港株式市場には中国ガス、華潤ガス(
01193)、昆侖能源(
00135)、新奥能源(
02688)、タウンガス(
01083)、中油燃気(
00603)、中国天倫ガス(
01600)など、主要都市ガス銘柄が顔を揃えているが、中でも評価が高いのは中国ガス。シティグループによれば、「煤改気」業務のパイオニアであることが同社の強みであり、8月までに北部10都市の約210万世帯と「煤改気」をめぐって契約。うち60万世帯へのガス管接続を完了した。年末までには170万世帯に接続し、さらに18年、19年、20年に各200万、400万、250万世帯への接続を完了するのが同社の目標。この目標値は経営陣が6月に示したガイドラインの80万、180万、250万世帯を大きく上回る強気の数字であり、ポジティブサプライズと受け止められている。
野村インターナショナルによると、新たな利用世帯の増加により、今後はガス管接続料収入の伸びが都市ガス各社の利益成長エンジンとなる見通しだが、個別では農村部で積極的に「煤改気」を推進している中国ガスの同収入の伸びが同業銘柄を上回る見込み。敏感度分析によれば、接続費収入が10%増加するごとに、同社の17年EPSは5.2%膨らむという。野村は先月下旬のリポートで、中国ガスの目標株価を21.9HKドルから27.5HKドルに引き上げ、「買い」の投資判断を継続した。また、クレディ・スイス、大和証券キャピタル・マーケッツも先月下旬、目標株価をそれぞれ29HKドル(修正前16.5HKドル)、27.8HKドル(同24HKドル)に引き上げ、「アウトパフォーム」「買い」の強気判断を据え置いている。
このほか、『香港経済日報』は中国ガスに続く有望銘柄として、ガス販売量の伸びと業績拡大が鮮明な新奥能源(
02688)、買収攻勢を通じて規模を拡大させている中国天倫ガス(
01600)をピックアップしている。うち新奥能源については、当面の目標水準を61.4HKドルとし、53.4HKドル近辺での買いを推奨。中国天倫ガスに関しては目標を6.2HKドルに設定し、5.4HKドル前後での買いを薦めている。