
2025-05-22 |
中国/政策/金融 |
|
テクノロジー支援へ金融改革強化、中国が新政策措置を発表
中国政府は、技術革新の促進を目的とする金融支援体制の強化に向けた包括的政策「高水準のテクノロジー自立を支える金融体制構築に関する政策措置」を発表した。科学技術部や中国人民銀行(中央銀行)、国家金融監督管理総局、証券監督管理委員会(CSRC)など7部門が共同で策定した。
政策は、テクノロジー企業や国家重点プロジェクトへの資金供給体制を整備し、技術革新と金融の連携強化を通じて「高水準の自立自強(自立的発展)」を支える体制構築を目指す。背景には、中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議(三中全会)で打ち出された「イノベーション駆動型成長戦略」や、中央金融工作会議での方針決定がある。
政策の柱は3つ。第一に、資金の供給側と需要側の双方から構造的課題に対応し、特にハードテック分野や中小の技術系スタートアップ向けの資金調達環境を改善する。第二に、すでに実施されている金融政策との連携を強化し、政策効果を最大化する。第三に、中央と地方、財政と金融、関係機関間の協調体制を整え、実効性のある支援策を講じる。
ベンチャー投資支援では、「国家創業投資引導基金(国家ベンチャーキャピタル指導基金)」の活用を通じ、初期段階の投資を誘導。ベンチャーキャピタルによる社債発行の支援や、保険・年金基金などの長期資金の呼び込みも促進する。国有投資機関に対しては、投資成果の評価期間をファンドのライフサイクル全体で評価するなど、より柔軟な運用を認める方針を示した。
信用供与分野では、政策金融機関を活用してテクノロジー関連のプロジェクトに対する再貸付(リファイナンス)枠を拡大し、商業銀行による技術開発向け長期融資制度の導入も検討する。条件を満たす地域には「科技支店」の設置も奨励し、金融機関の現場対応力を高める。
資本市場に関しては、コア技術を持つ企業のIPOや上場後のM&A、株式報酬制度を支援。新興企業向け株式市場である北京証券取引所の制度整備も進める。テクノロジー企業による社債(科技債)発行の促進策としては、新たに債券取引の「科技板」の創設を検討し、長期・低金利の調達手段を広げる。
保険分野では、ハイリスクな研究開発や実証実験、ネットワークセキュリティーといった領域に対応する新たな保険商品の整備に加え、複数保険会社によるリスク共担方式の導入なども進める。
また、中央と地方政府の連携を強め、北京・上海・広東などで知的財産金融の包括的な試験制度を導入。中関村(北京)や長江デルタ地域の一部都市では、先行試験区としてモデル政策を展開する。外国資本による中国テクノロジー企業への出資や、海外上場も引き続き後押しする。
中国政府は今回の政策措置により、ベンチャー投資、銀行融資、資本市場、保険、債券市場といった各種制度を有機的に連携させ、重点分野への資金供給を加速させたい考えだ。科学技術部などは「政策ツールの拡充によって、持続的で体系的な金融支援体制の確立を目指す」としている。