大和キャピタル・マーケッツは最新リポートで、5月10−11日にスイス・ジュネーブで開催された米中貿易協議の第1回会合が市場予想を上回る成果を上げたと指摘した。米中の共同声明によると、両国は相互に課していた「相互関税」を125%から10%へと90日間引き下げることで合意した。ベッセント米財務長官は、双方が貿易のデカップリングを望んでおらず、交渉を継続するための二国間メカニズムに楽観的な見方を示した。『AAストックス』が13日伝えた。
大和は今回の協議結果について、自社が4月11日に発表した報告書で示した「最善のシナリオ」に近いとし、同シナリオではトランプ米大統領が中国製品への最終的な関税上限を54%に設定するとの見通しを示していた。これを踏まえ、中国の2025年の国内総生産(GDP)成長率予想を前年比4%、輸出成長率予想を0.6%に引き上げた。関税「休戦」期間中に課される関税は、大和の当初想定よりも低く、経済への下押し圧力が和らぐとみている。
短期的には「貿易楽観ムード」が中国株式市場を押し上げるとし、ハンセン指数は3月の高値に近づく可能性があると予想。電子、繊維、海運、電気設備など「関税の影響を受けやすい業種」に戦術的な投資機会があるとみて、立訊精密工業(
002475)や中山華利実業集団(300979)を推奨銘柄に追加し、華潤ビール(
00291)などを除外した。
また、米中協議を受けた技術的な投資機会がある銘柄として、香港株では百済神州(
06160)、瑞声科技(
02018)、BYDエレクトロニック(
00285)を挙げた。
一方、ハンセン指数の上値余地は限定的との見方を継続している。ハンセン指数はすでに大和の2025年中間目標値(22700ポイント)を上回り、年末目標値(24000ポイント)に接近しているためとしている。また、今回の米中協議の政策スタンスは前向きだったが、貿易黒字や技術制限をめぐる対立から、今後の交渉は紆余曲折があると予想。協議の進展は大規模な経済刺激策の必要性を後退させる可能性もあるとも指摘した。
さらに、相互取引を通じて本土から香港市場に投資する「南向き資金」が12日に持ち高を大きく減らしたことにも注目。25年に入ってから南向き資金が香港市場の流動性供給源となってきたが、同日の売り越し額は185億HKドルと約4年ぶりの高水準に達したと指摘し、利益確定売りの圧力が高まっているとの見方を示した。テクニカル面では、ハンセン指数が24000−25000ポイントで強い上値抵抗があると予想した。