中国の24年の実質GDP(国内総生産)成長率は前年比5.0%と、政府指導部が必ず達成すると宣言していた目標の「5.0%前後」にぴたりと着地した。1−9月期の段階では前年同期比4.6%だったが、9月下旬以降、金融緩和や不動産支援策、資本市場支援策、消費刺激策など、多方面の景気対策に動いた効果で、10−12月期の成長率が6期ぶり最高となる同5.4%を記録。市場コンセンサス予想の5.0%を大きく上振れたことが、通年の成長率を押し上げた。それでも、24年のGDP成長率は前年(同5.2%)比で減速している。
続く25年に関しては、米中摩擦の激化が最大の懸念材料。国内の不動産不況も当面続くとみられ、経済成長率の一定程度の減速が見込まれている。年間を通して「前高後低」型で推移し、通年で前年比4%台半ばの成長率になるとの見方が優勢だ。3月の全国人民代表大会で発表される見通しの25年の政府GDP成長目標に関しては、「24年と同じ前年比5%前後に設定される」との観測が強く、景気対策の継続は必至の情勢となっている。
◆不動産開発投資は24年に10.6%減、統計開始以来最悪の数字に
国家統計局の17日の発表によれば、24年通年のGDP総額は前年比5.0%増の134兆90874億元と、初めて130兆元の大台を突破した。耐久消費財の買い替え補助金制度「以旧換新」を含む支援策を背景に、消費支出の貢献が44.5%となり、GDP成長率を2.2ポイント押し上げたという。ほかにモノとサービスの純輸出が1.5ポイント分の成長率に寄与。資本形成が残りの1.3ポイントだった。
統計局が同日発表したその他の主要指標を見ると、小売売上高は12月に前年同月比3.7%増で、鉱工業生産は6.2%増。いずれも前月比で明らかに加速し、市場予想(各3.0%増、5.4%増)を上回った。24年通年では、小売売上高は前年比3.5%増、鉱工業生産は5.8%増だった。
一方、固定資産投資は1−12月の累計で前年同期比3.2%増と、市場予想および1−11月期(いずれも3.3%増)を小幅に下押ししたが、これは不動産開発投資のさらなる低迷に足を取られたため。インフラ投資は政策支援効果で4.4%増と、1−11月比で0.2ポイント加速。製造業投資は9.2%増と小幅の縮小に踏みとどまったが、不動産投資が10.6%減と、統計記録が残る1987年以来、最大の下げに見舞われた。
24年9月以来の不動産支援策や金融緩和を背景に、一部の不動産指標は回復傾向にあり、新築不動産の販売面積と販売額は1−12月にそれぞれ前年同期比12.9%減、17.1%減と下げ幅が縮小(1−11月は14.3%減、19.2%減)。国家統計局のデータを基にロイター社が算出している主要70都市の新築住宅価格も、12月には全体で前月並みとなり、23年6月以来初めて、下落局面を抜けた。ただ、供給過剰感が続く中、デベロッパーの投資意欲は引き続き低調。大都市部中心の住宅市況の回復がこの先、いつ頃、どの程度、不動産投資の持ち直しにつながるかが注目されるところだ。
ゴールドマン・サックスの報告によれば、現時点では1線都市(4大都市)の復調とは裏腹に、2線級の中堅都市の不動産市場は依然、強い逆風に直面しているという。住宅供給過剰は深刻で、業界の構造的な問題が残るのが現状。同社は短期的には、明確な市況の回復には期待しにくいとの見方だ。一方、国家統計局の康義局長は記者会見の席上、「住宅購入制限の緩和・廃止をはじめとする不動産支援策が先行き信頼感の段階的な回復を後押ししている」と指摘。「中長期的に見ても、新型都市化計画はまだ完成しておらず、不動産実需には依然として潜在力がある」とコメントしている。
◆政策金利と預金準備率の引き下げ、早ければ旧正月明けに発表か
なお、25年の実質GDP成長率については、前年比4%台半ばの予測が目立つ。国際通貨基金(IMF)は1月17日に発表した最新の「世界経済見通し (WEO)」で、中国の25年の予想GDP成長率を0.1ポイント引き上げ、前年比4.6%に設定した。大新金融集団は統計発表直後に0.1ポイント上方修正し、4.5%に設定。インフラ投資の一定の加速を予想しながらも、不動産投資の萎縮をカバーするのは難しいとの見方を示している。また、ゴールドマン・サックスは25年1−3月期の予想成長率を0.5ポイント上方修正し、前年同期比4%とした。
モルガン・スタンレーは10−12月期の予想以上の高成長は一時的との見解。指標の改善は、政府の危機意識の薄れにつながるとし、不動産市場や社会保障方面の支援策の強度が引き続き、不十分となる可能性があるとしている。1−3月期の経済成長に関しては堅調を予想しながらも、4−6月期以降は米国の関税引き上げや国内の景気刺激策の効果の薄れから、成長率が鈍化するとの見方だ。
いずれにせよ、焦点となるのは政策動向。保銀資本管理の張智威総裁兼チーフエコノミストは、「国内経済の成長軌道を維持するためには、引き続き大規模かつ持続的な刺激策が必要だ」と指摘している。金融政策面では、早ければ旧正月連休明けに、政策金利と預金準備率の引き下げが行われるというのが、ほぼ市場のコンセンサスとなっている。