中東情勢の悪化を受け、安全資産とされる金が一段高の展開となる中、香港株式市場では産金銘柄や金ETF(上場投資信託)とともに、金銀宝飾品銘柄が焦点の一つとなっている。国際金相場の上昇を受けた金装飾品の値上がりは一部で需要減速を招く半面、資産価値の保全需要や先高期待を受けた財テク需要を取り込むチャンスにつながる。
『香港経済日報』は金価格の高騰により、商品価格の上昇と金在庫の評価額の上昇を受けた利益の上乗せが期待できると指摘。ほかに、周六福珠宝のIPOによる刺激効果といった好材料に言及し、個別では、全産業チェーンを網羅する周大福珠宝(
01929)と、中国の伝統デザインを取り入れた独自のデザインで人気を集める老鋪黄金(
06181)を有力銘柄としてピックアップしている。
◆金高騰で原材料・完成品在庫の評価額が拡大へ
中国の金装飾品市場はアクセサリーとしての保有意欲と資産価値の保全を兼ねた需要増を背景に、引き続き有望。フロスト&サリバンの予測では、国内市場の規模は24年の5688億元から29年には8185億元へ、年率平均7.6%増加する見通しという。ちなみに24年には、金装飾品は中国の宝飾品販売収入全体の59.4%を占めた。
サプライチェーンの上流は金採掘、輸入、回収、貿易などで、中流は加工・製造(ジュエリーブランドのOEM製造を含む)。小売店やECプラットフォームなどの販売チャネルが下流となる。香港上場の宝飾品銘柄の場合、下流業務を中心に、デザイン・加工などの中流業務を手掛けているのが大半のケースであり、一般には金製品の販売額と在庫分から、加工費や賃料、マーケティング費用、ヘッジ損益などのコストを差し引いた金額が利益。金価格の上昇局面においては、特に在庫評価額(金原材料と完成品在庫)の押し上げ効果が大きく、金製品の粗利益率も上向くことになる。
金価格は年初から先週末13日までに約30%の上昇を記録したが、最近のイスラエル・イラン情勢を受けた一段高で、史上最高値の更新を目指す展開となっている。先行きに対しても強気見通しが目立ち、JPモルガンは先ごろ、4−6月期の予測を1トロイオンス=4000米ドルに上方修正。ゴールドマン・サックスは最高で4500米ドルに接近する可能性を指摘している。
◆周大福珠宝の業績回復傾向とIPO刺激効果もプラス
このほか、金銀宝飾品銘柄にとってのプラス材料は「主要銘柄の業績回復見通し」と「香港IPO市場の活況を受けた刺激効果」の2点。うち前者に関する代表的な事例は周大福珠宝。同社の25年3月通期決算は前年比18%減収、9%減益とさえない内容だったが、上期の前年同期比20%減収、44%減益から改善。中でも製品ミックスの優良化や金価格の上昇を追い風とした利益率の改善が顕著となり、通期の営業利益率は前年比4ポイント高の16.4%。営業利益は9.8%増だった。続く26年3月期に向けた業績回復傾向がかなり鮮明となった格好だ。
もう一つ、IPOによる刺激効果という点では、近く行われる予定の周六福珠宝のIPOが注目されるところ。宝飾品チェーンの同社はすでに、上場に向けたヒアリングを通過しており、IPOがスタートすれば、既存の同業銘柄の再評価を後押しする可能性が高い。
◆金在庫の多さで周大福珠宝が有力、値上がりトップは老鋪黄金
『香港経済日報』が注目する宝飾品銘柄は、周大福珠宝と老鋪黄金。うち周大福珠宝は上流の金精錬を含む全産業チェーン手掛けるのが特徴であり、金在庫量の大きさが強み。また、高利幅製品の強化や著名キャラクターとのコラボ、ペットジュエリーシリーズの投入を受けた利益率の上昇に加え、既存店売上高の改善、ヘッジ損失の大幅減見通しなどが、26年3月期の好決算期待を後押ししている。直近では華泰証券が目標株価を16HKドルに引き上げ、投資判断を「買い」にアップグレード。中国国際金融は目標株価14.92HKドルで、「オーバーウエート」の投資判断を付与している。
一方の老鋪黄金は中国の伝統的な意匠をモチーフとした「ヘリテージゴールド」シリーズで人気の装飾品製販チェーンであり、高級ブランドとしてのポジショニングの確立や、製品・ブランドの差別化による競争優位が強み。年初来値上がり率は実に305%(先週末13日終値ベース)に達し、宝飾品銘柄のトップとなった。同社は24年12月通期に前年比236%の大幅増益を達成したが、ブルームバーグの市場コンセンサス予想では、25年も136%の増益を達成する見込み。シティグループと中国国際金融は最新リポートで、目標株価をそれぞれ1084HKドル、1079.06HKドルに設定。「買い」、「アウトパフォーム」の投資判断を維持している。