中国汽車工業協会(CAAM)が9日発表した5月の販売統計により、年初から低迷していた新車市場が回復基調にあることが明らかになり、香港株式市場では14日も、自動車銘柄が全体相場をアウトパフォームした。新エネルギー車最大手、BYD(
01211)の月初来値上がり率は14日終値ベースで12%弱。ほかに、EV新興勢力3社、蔚来集団(
09866)、小鵬汽車(
09868)、理想汽車(
02015)の月初来値上がり率が15−34%。ハンセン指数の月初来値上がり率6.4%を大きく上回るペースとなった。
CAAMの5月の販売統計(卸売台数)をみると、新車全体の販売台数は前年同月比27.9%増の238万2000台で、内訳は乗用車が13%増の205万台1000台、商用車が38%増の33万台。上海市のロックダウンに起因する前年同月実績の異例の低さが、相対的に高い伸びを後押しした要因だが、新エネ車の健闘を受け、台数ベースでも緩やかな改善傾向を示した。1−5月の累計では前年同期比11.1%増の1061万7000台となる。
うち、注目の新エネ車販売台数は5月に前年同月比60.2%増の71万7000台と、年初から月別最多。1−5月では前年同期比46.8%増の294万台に達した。これで、新車販売全体に新エネ車が占める割合は1−5月に27.7%。5月単月では30.1%と、実に3割超えを記録している。CAAMが示した2023年通年の新エネ車販売見通しは前年比30.7%増の900万台であり、5月末時点の達成率は32.6%。この先一段の加速が期待される状況だ。
また、輸出も引き続き好調。中国の自動車輸出は1−3月に日本を上回り、世界首位に浮上したが、直近の5月は新エネ車の急成長(150%増の10万8000台)が牽引し、全体で58.7%増の38万9000台。1−5月では全体で81.5%増の175万8000台、新エネ車が160%増の45万7000台だった。個別では国内の新エネ車最大手であるBYDの輸出伸び率が最も高く、1−5月に前年同期の15.2倍に当たる6万9000台を記録している。
◆新エネ車輸出が急成長、国内の購入支援策も追い風
自動車セクターにとっては、減税・補助金の一部終了に伴い低迷していた新車販売が、新エネ車を中心に持ち直しつつあることや、輸出の好調が追い風だが、ほかに政府の自動車購入促進策が支援材料。最近では商務部が8日、販促活動を組織的かつ大規模に行う方針を地方政府やCAAMに通達した。6−12月にかけ、各都市で「百城連動」カーフェスを開催するとともに、あらゆる小都市・農村部を網羅した「千県万鎮」新エネ車消費キャンペーンを展開する方針を明らかにしている。
また、自動車銘柄にとっては“テスラ効果”もプラス。米テスラ(TSLA)の株価は14日まで14営業日続伸と、過去最長の連騰記録を更新。これが新エネ車セクターへの資金流入を後押ししているという。
◆BYDと理想汽車に強気見通し
一方、自動車銘柄を選択する上でのポイントとして、『香港経済日報』は「新エネ車の支援政策と消費トレンド」と「輸出」を挙げ、この両面が追い風となる銘柄が優先的な選択肢になるとしている。そうなれば、やはり焦点は新エネ車最大手で、かつ輸出も急増中のBYD。EV新興勢力の中では、販売が好調な理想汽車が有望という。
BYDの新車販売台数は1−5月に98%増の100万台(5月は109%増)と極めて好調。国内シェアは5月に38%と、2位以下を大きく引き離す圧倒的首位だった。世界EV乗用車市場においても、1−3月期に21%のトップシェアを獲得したという(カウンターポイント調べ)。同社は昨年から海外展開を加速させており、1−5月の輸出は前年同期の15倍。すでに輸出が成長牽引役となりつつある。22年通期には前年比445%の大幅増益を達成したが、ブルームバーグの市場コンセンサス予想によれば、続く23年、24年、25年も36%、48%、62%の利益成長が見込まれるという。
BYDに関しては、1−3月期決算発表後の5月上旬以降、証券各社が一斉に強気の投資判断を付与している。うちクレディ・スイス、HSBCは目標株価をそれぞれ430HKドル、450HKドルに設定。シティに至っては602HKドルという強気の目標を示している。
EV新興勢力の中では、販売好調の理想汽車に対する評価が高く、同社の年初来騰落率は自動車銘柄の中で断トツトップとなっている。主要新興勢力3社と言えば、小鵬汽車、蔚来集団、理想汽車だが、5月の納車台数では理想汽車が146%増の2万8277台と圧倒的に先行し、小鵬と蔚来は26%減、12%減。1−3月期決算も明暗を分け、他2社が赤字継続となる中、理想汽車は9億元超の黒字に転換した。同社に関しては、HSBCとCLSAアジア・パシフィック・マーケッツがそれぞれ、目標株価を149HKドル、162HKドルに設定。いずれも「買い」の投資判断を付与している。