香港株式市場の旧暦新年初の取引日となった1月26日には、主要株価指標のハンセン指数が大幅続伸し、前営業日(旧正月連休前)比2.37%高の22566.78ポイントで引けた。終値で約11カ月ぶり高値を記録したことになるが、この日の相場を牽引した業種の一つが不動産。政策面の相次ぐ支援と市況の底入れ期待を受け、龍湖集団(
00960)を筆頭に6銘柄が5%を超えて値上がりした。
中国本土の不動産不況は今も続いているが、一段の政策支援やマクロ経済の復調観測を背景に、23年には段階的に市況が上向くとの見方が強い。また、当局がデベロッパーの資金圧力の緩和に向けた救済策に動いていることも朗報。こうした要因から、不動産は代表的なターンアラウンド(反転上昇)期待セクターの一つとなっており、『香港経済日報』は碧桂園(
02007)、旭輝控股(
00884)などを注目銘柄としてピックアップしている。
◆銀行各行がデベロッパー向け与信を積極化、上限4兆元超え
22年には中央政府による締め付け策の調整を受け、地方政府が年初から個別の住宅購入支援策を強化してきたが、11月下旬には中央当局がデベロッパーへの資金支援に関する通達、通称「金融16条」を施行。これがデベロッパー救済策という点から、政策転換の大きな節目となった。また、中国証券監督管理委員会は11月末、銀行融資と社債発行にエクイティファイナンス(新株発行による資金調達)を加えた「三本の矢」を通じ、デベロッパーの資金難解消を支援する方針を表明。さらにその後、不動産不況の元凶となったデベロッパーの融資制限措置「3つのレッドライン(3条紅線)」の緩和を、政府当局が検討しているとの外電情報も伝わっている。
中央政府の意向を受け、金融機関も不動産デベロッパーに対する与信を積極化。これまでにデベロッパー各社にオファーした与信限度枠は総額4兆元を超えたという。最近では4大国有銀行の一つ、中国銀行(
03988/
601988)が、旭輝控股(
00884)や宝龍地産(
01238)など、デフォルトを経験したデベロッパーを含む20社に対し、総額3000億元の与信枠を付与した。
また、不動産市況の回復に向けた住宅購入支援という点では、中国人民銀行が10月、公的積立金制度の住宅ローン金利を0.15ポイント引き下げるという動きに出た(住宅取得1件目の場合)。南京、蘇州、鄭州など40を超える2線都市は、2件目以降となる住宅物件取得において、頭金比率を2割に引き下げるなどの支援策を導入している。
◆個別では碧桂園や旭輝控股が有望か
個別のデベロッパー銘柄に目を向けると、国内最大手の碧桂園が注目銘柄の一つ。販売低迷に見舞われながらも、22年通年の販売額で業界トップの座を維持した。民営企業の同社にとっては政府による資金調達支援策による恩恵が大きく、資金圧力は明らかに緩和に向かう見通しだ。西南証券によれば、昨年11月以来2度の第三者割当で計86億元の調達資金したことにより、運転資金の確保と外貨建て債の償還が可能になったという。ブルームバーグの市場コンセンサス予想では、23年に前年比15%の増益に転じる見通しが示されている。
一方、旭輝控股は11月にデフォルト(社債利払いの不履行)を起こしたが、「三本の矢」などの支援措置を受け、資金圧力がやはり大きく緩和しているもようだ。1月初めには国有の金融保証保険会社、中債信用増進が全額保証する形で、20億元の起債(ミディアムタームノート)を行う計画を表明。その前には中国建設銀行(
00939/
601939)、中国光大銀行(
06818/
601818)、中国郵政儲蓄銀行(
01658/
601658)などから、数百億元規模の与信枠を獲得していた。ブルームバーグの市場コンセンサス予想では、物件成約額の半減が響き、22年通期決算は前年比43%の減益となる見込み。続く23年も同2%の減益が予想されるが、24年には10%の増益に転じる見通しという。
中国国際金融は旭輝控股の土地保有状況の手堅さや一定規模の商業資産の保有、バランスシート内外の負債状況がコントロール可能なレベルにあることなどを前向きに評価。「3本の矢」をはじめとする与信緩和策の恩恵銘柄として注目に値するとし、華潤置地(
01109)、中国海外発展(
00688)、緑城中国(
03900)、越秀地産(
00123)、建発国際投資(
01908)とともに旭輝控股を選好するとしている。