6月の招福銘柄は、中国の新型コロナ感染者の減少を受け、生産活動や個人消費の回復期待銘柄を中心に選んだ。特に上海では2カ月にわたる都市封鎖(ロックダウン)を受けて大きな打撃を受けたが、封鎖の解除後には、オンライン旅行会社の同程旅行(
00780)やビールメーカーのバドワイザーAPAC(
01876)などの銘柄に需要の急回復が期待される。SMIC(
00981)にとっては上海工場正常化への思惑に加え、ハンセン指数への採用決定が追い風となりそうだ。また、中国政府は「ゼロコロナ」政策の厳格な実施による景気減速を受けてインフラ投資を加速する方針を示しており、セメントメーカーの安徽コンチセメント(
00914)や発電設備のエンジニアリング事業を手掛ける中国能源建設(
03996)にも期待が集まる。今月はこの5銘柄に注目したい。
■同程旅行(00780):国内感染が落ち着く、旅行需要の回復に期待
株価:15.06HKドル(5/31終値)
【中国のオンライン旅行会社大手】中国本土で新型コロナの感染が落ち着きをみせるなか、旅行業界の回復を見込んだ買いが入りやすいか。ロックダウンが2カ月以上に及んだ上海市では6月から経済活動の正常化に向けて規制が緩和され、首都の北京でも感染者数が減少傾向にあり、新たに大規模な行動規制が導入される可能性は低くなっている。端午節や7月からの夏休みを控え、短距離を中心に旅行需要の回復が見込まれている。国内旅行の再開により航空機や鉄道、船のチケットや旅行保険の取り扱い、さらに宿泊予約が増えれば、同社の業績改善につながりそうだ。コロナ禍でオンライン旅行代理店の利用が拡大していることも追い風。
■安徽コンチセメント(00914):政府が景気対策に本腰、インフラ投資で恩恵
株価:39.80HKドル(5/31終値)
【安徽省政府系のセメント大手】中国政府が景気対策に本腰を入れると見込まれるなか、インフラ投資で恩恵を受けやすい銘柄として選んだ。政府は新型コロナ対策として一部で厳格な都市封鎖を実行したが、景気は冷え込んだ。22年のGDP成長率目標の達成には迅速な景気浮揚と雇用創出に向けたインフラ建設の推進が不可欠で、セメント銘柄などに恩恵が及ぶとみられる。22年予想PERは5.7倍と華潤セメント(
01313)の6.3倍に比べて割安で、22年1−3月期決算は純利益が15%減ったが、22年通期の市場予想は純利益が前年実績比3%減。4−12月期に盛り返すとの見方が優勢となっている。
■SMIC(00981):上海ロックダウン解除とハンセン指数採用が材料
株価:17.10HKドル(5/31終値)
【中国最大の半導体ファウンドリー】上海市が6月から都市封鎖(ロックダウン)解除に踏み切る見通しとなり、SMICが同市に置くファブ(工場)の操業が正常化するとの思惑買いが入りそうだ。6月13日付でハンセン指数の構成銘柄となることも買い材料。株価は今年4月下旬から5月初旬に15HKドルを割り込み、ほぼ2年ぶりの安値圏にあったが、5月下旬には17HKドル台へ値を戻した。米政府の制裁により高性能な半導体製造装置の入手が難しくなるリスクを抱えているものの、世界的な経済活動の再開を背景に半導体需要は底堅いことから、買い戻しの好機とみる。
■バドワイザーAPAC(01876):感染収束で消費回復に期待
株価:20.85HKドル(5/31終値)
【ABインベブのアジア事業会社】中国本土で新型コロナウイルスの感染が落ち着きつつあり、下期の消費回復期待を背景に内需株に注目が集まりそうだ。防疫措置を受けた全国的なビール販売量の落ち込みで関連銘柄の株価は低迷が続いているものの、マイナス要因は織り込み済みとみる向きが強い。各種原材料の高騰が懸念材料だが、ハイエンド市場の拡大に加え、値上げを受けて平均販売価格が上昇していることはプラス材料。バドワイザーAPACは中国本土だけでなく、アジア全域で事業を手掛けており、各国で規制の解除が進んでいることも販売量の押し上げにつながりそうだ。
■中国能源建設(03996):中国政府のインフラ投資強化が追い風に
株価:1.08HKドル(5/31終値)
【発電設備の大手エンジニアリング会社】中国政府が景気安定に向けてインフラ投資を加速する方針を示していることが追い風。直近1−3月決算は売上高が前年同期比16%増の712億7600万元、純利益が16%増の9億6000万元と2桁の増収増益を達成。同期の新規受注額は海外の落ち込みが響き0.1%増の2440億7000万元にとどまったが、国内は11%増と堅調な伸びを示した。株価は足元で軟調な値動きが続いているが、22年もコンセンサス予想で2桁の増収増益が見込まれており、バリュエーション面で割安感が強い。今後、受注関連のニュースが出てくれば株価の反転上昇のきっかけになる可能性がありそうだ。