中国の国家新聞出版署は7日、2022年6月に商用化を認可した国産オンラインゲーム60本のリストを公式ウェブサイトに掲載した。ゲームの認可は昨年7月を最後に8カ月にわたって停止されていたが、今年4月に9カ月ぶりに再開されており、今回の認可は4月以来、2カ月ぶりとなる。先週の香港市場では、認可ペースの正常化などを期待し、中手遊科技集団(
00302)やキングソフト(
03888)などを中心に関連銘柄が大きく買われた。
ただ、中国本土のゲーム市場は売上高の伸び悩みが続いている。新型コロナウイルスの感染が最初に拡大した2020年1−3月期は売上高が730億元と前年同期に比べ30.4%増加したが、調査会社の伽馬数拠(CNG)によると、上海など各地でロックダウン(都市封鎖)が相次いだ2022年4月は170億元と前月比で2%の増加にとどまり、前年同月比では5%減少している。売上高トップはテンセント(
00700)が昨年5月に発表した「重返帝国」で、新作不足の影響が鮮明。4−6月期のゲーム売上高は690億元にとどまり、前年同期比で5.5%減少すると見込まれている。

国家新聞出版署は昨年8月、未成年者(18歳未満)のネットゲーム中毒を防ぐため、管理措置を一段と厳しくすると発表。ゲーム会社が未成年者にサービスを提供できる時間帯を金曜、土曜、日曜と祝日の夜8時から9時までの1時間に限定したほか、ゲーム利用者の実名登録も厳格な運用を指示した。テンセントの経営陣は、当局の管理強化による業績への影響は今年10−12月期まで続くと予想。規制緩和が見込めないなか、新作ゲームの認可正常化に対する期待は高まっている。
◆6月の認可ゲーム数は60本、「試行」制度導入
国家新聞出版署が認可したゲーム数は4月が45本、6月が60本にとどまっており、2021年1−7月の月平均(102本)と比べると、依然として隔たりがある。また、4月には百度(
09888)の「進撃的兎子」や三七互娯網絡科技集団(
002555)の「夢想大航海」 、6月には完美世界(
002624)の「黒猫奇聞社」や英雄娯楽科技の「極無双2」などがそれぞれリスト入りしたものの、業界大手のテンセントやネットイース(
09999)、ビリビリ(
09626)のゲームは4月のリストにも6月のリストにも含まれなかった。
ただ、6月の認可リストをみてみると、複数ゲームの申請分類欄にこれまでの「国産モバイルゲーム」に加え、新たに「試行」の注記があることがわかった。業界関係者によれば、注記は審査手続きの簡略化を意味するもので、審査期間の短縮につながるとみられている。ゴールドマン・サックスは、これまでと同様に1カ月に1回のペースに戻るとみているほか、「試行」制度の導入で審査手続きに柔軟性が加わったと評価。今後、二次元ゲームやMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインロール・プレイング・ゲーム)などが認可される可能性が高いとの見方を示した。一方、シティグループは、6月には完美世界や米哈遊など比較的規模の大きい制作会社の作品が認可されていることから、テンセントやネットイースについても、近くリスト入りする可能性が高いとみている。
◆ネットイース選好、売上高の7割超がゲーム業務
個別では、ネットイースを選好する向きが強い。テンセントやネットイースは4月、6月と連続でリストから漏れたものの、安定的な売り上げをもたらす主力ゲームを抱えているほか、昨年以前に認可されたゲームも数多くあり、ゲーム業務は引き続き安定を維持しているとの見方。ただ、テンセントやビリビリ、XD(
02400)はいずれもゲーム業務以外に広告業務も手掛けており、昨年8月以降の認可停止を受けてゲーム会社がプロモーションを控えたことで、業績の下押し圧力が強まる結果となった。一方、ネットイースは売上高の7割超をゲーム業務が占めており、マクロ経済の悪化を受けてテンセントやビリビリの業績が下向くなか、ネットイースは営業ベースで29%増益と健闘をみせている。
ネットイースは「暗黒破壊神:永生不朽(ディアブロイモータル)」を6月2日に海外市場でリリースしており、第1週の売上高は1日当たり180万米ドルに上っている。23日には中国や香港、台湾でもリリースされる予定で、モルガン・スタンレーは中国本土の1カ月目の売上高が7億−10億米ドルに上ると予想。「ハリー・ポッター:魔法の覚醒」などの貢献もあり、ネットイースの4−6月期のゲーム売上高は前年同期比で17%増加すると見込み、投資判断を「オーバーウエート」、目標株価を130米ドル(約211HKドル)にそれぞれ設定している。