24年の旧正月8連休(2月10−17日)の個人消費の活況を受け、今後の消費回復への期待が高まっている。例年より1日多い“8連休”効果があったとはいえ、旅行消費・娯楽消費は記録的水準に達しており、まずは1−3月期の関連指標を大きく押し上げる見込み。24年通年の中国経済にとっても、旧暦「辰年」の出足好調は特にマインド面から追い風となりそうだ。旧正月期間中にはまた、中古住宅取引も上向いたとの情報が伝わっている。
JPモルガンのアジア太平洋地区チーフストラテジスト、許長泰氏は「この旧正月には選択的消費が中心だった」と指摘し、マスマーケット向けの消費銘柄を有望視。外食やスポーツ用品銘柄などに目を向けている。
◆国内旅行消費は過去最高の6327億元、映画興収も記録更新
中国文化観光部が18日に発表した最新統計によれば、旧正月連休中の国内旅行者数は推計延べ4億7400万人に上り、前年同期比で34.3%増。総消費額は6326億9000万元と、同47.3%増。コロナ禍前の19年旧正月期との比較でも19%増、7.7%増となり、そろって過去最高を記録した。同部によれば、政策効果や供給面の改善、キャンペーンなどが旅行意欲を後押しした要因。このほか、海外へのアウトバウンドは期間中に延べ約360万人、インバウンドは約323万人に達した。
『香港経済日報』によれば、この旧正月連休の国内旅行のトレンドは「里帰りの“観光旅行化”(長く滞在せずに短期訪問する)」、「南北相互のヒトの流れ」「大都市・小都市間のヒトの流れ」だったという。
一方、テンセント(
00700)が展開する万能アプリ「微信」と旅行予約プラットフォームの同程旅行(
00780)が共同でまとめた「辰年春節消費の『新味』観察」リポートによれば、アウトバウンドでは中国人旅行者に対してビザを免除した東南アジア(シンガポール、マレーシア、タイ)が最も人気の旅行先。ほかに日韓を含む短期旅行が主体だった。半面、インバウンドを支えたのは主に香港市民の“北上”と、外食などの旺盛な消費。香港人による本土での消費回数、取引額(オフライン+オンライン)はそれぞれ、前年同期実績の約6倍、約4倍を記録したという。
この旧正月には映画市場も好調で、国家電影局の発表によると、旧正月期間の映画興行収入は前年同期比では19%増の80億2000万元。21年の78億4200万元を上回り、過去最高を記録した。燈塔電影の集計によれば、映画観客動員数は1億6300万人で、上映回数は394万2000回。こうした数字も過去最高を記録したという。実際には、24年の旧正月は例年より1日多い8連休だった上に、2月14日のバレンタインデーと重なったことがさらに動員数を押し上げたもよう。ただ、それでも旅行・娯楽消費の活況は朗報。これまで低調だったモノ消費に関しても段階的な回復期待が高まっている。
◆不動産市場にも明るい兆し、中古住宅市場に動き
このほか、不動産市場にも一部、明るい兆しが見えたもようだ。貝殻研究院の調査によれば、主要50都市における中古住宅取引が旧正月連休中に急回復。本来であれば閑散期に当たるにもかかわらず、全体で70%以上増加したという。1線都市の取引量が前年同期比3%減少する半面、2線、3線都市で98%、65%増えたとの調査結果が明らかになっている。
中国銀行の宗良首席研究員は、今年の旧正月消費の特徴として、◇消費群の人数と消費総額がいずれも大きく増えた、◇消費が多様化し、旅行、買い物、外食、ハイテクなど各分野にブームの好影響が及んだ、◇地域的にも多様化し、各地で消費が活況を呈した――の3点を指摘。消費の活況が、先行き期待の強化や市場の信頼感の高まりにつながる見通しを示している。
実際、19日に旧歴「辰年」の大発会を迎えた本土A株市場にとって、連休中の消費市場の活況はプラスとなりそうだ。ほかに香港市場の旧正月明け以降の連騰も追い風。中国人民銀行傘下の『金融時報』はこのタイミングで、「事実上の政策金利、最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)が20日に引き下げられる」可能性に言及しており、政策面からマクロ経済とA株相場の回復基調を固めることができるかが注目されそうだ。