本土の不動産管理セクターに対する楽観見通しが再び高まっている。20年末から21年年初にかけて急騰した同セクターは2月にいったん調整し、3月に反転上昇。その後、4−5月には大手による第三者割当増資や目新しい材料の欠如から、さえない値動きが続いたが、ここに来て21年6月中間期の好決算見通しに投資家の目が向いた。緑城管理(
09979)の大幅増益見通しの発表を受け、23日にはセクター全体が買われる展開となり、うち融創服務(
01516)、碧桂園服務(
06098)、華潤万象生活(
01209)がそれぞれ前日比6.1%高、4.6%高、4.0%高と、いずれも上場来の高値圏に到達。先週一足先に上場来高値を更新し、その後も連日値上がりしている世茂服務(
00873)に続く勢いを見せた。
不動産管理銘柄の業務は単なるマンション管理だけでなく、コミュニティーサービスやその他周辺ビジネスに広がっており、この点から将来的な成長期待が大きい。『香港経済日報』は3月下旬、うち世茂服務の買いを推奨したが、この時点からの同社株価の値上がり率は50%強。同紙は政策支援の下、中長期的に高付加価値サービスが浸透すると予想し、サービス料金の一段の上昇余地も大きいとみている。中国国際金融は、「業界の発展局面はまだ初期段階にある」との認識であり、向こう5年間、量と価値の両面から高成長が続くと予測。同時に業界の集約化が進むとし、大手銘柄を有力視している。
◆セクター平均で上期に62%増益か、政策面は順風
不動産管理銘柄の中では、緑城管理が21年上期の大幅増益見通し(前年同期比70%超)を明らかにしたが、その他銘柄も近く、これに続く見込み。ジェフリーズは管理銘柄の利益成長率が上期に平均62%に達するとみる。JPモルガンは過去2カ月余り続いたさえない値動きから一転、好決算見通しを材料にセクター全体の株価が上向き、8月初めまでに軒並み、20%近く値上がりするとの見方だ。
一方、不動産管理セクターを取り巻く政策の方向性は明らかに順風。国家発展改革委員会などの関連10部署は21年1月、不動産管理会社に対し、自社管理マンションの周辺にある旧市街を含む「エリアの一括管理」を推奨すると通達した。さらに一定条件を満たした企業に関しては、高齢者向けサービスや託児所・幼稚園、家事代行、健康促進、カルチャー、宅配物の受け取り・発送といった関連業務に手を広げ、生活サービス全般を含むビジネスモデルを構築することを奨励する方針を通知。物件管理サービスからコミュニティーサービスのグレードアップに、政府がお墨付きを与える形となった。
◆世茂服務・融創服務など3社、上期に利益倍増見通し
個別銘柄を見ると、21年上期にセクター平均を上回る大幅増益が見込まれるのは合景悠活集団(
03913)、融創服務、世茂服務の3社で、ジェフリーズの予想はいずれも前年同期比100%超の大幅増益。一方、粗利益率の改善幅という点では、融創服務と華潤万象生活が上位になる見通しという。この2銘柄の株価のバリュエーションはすでに極めて高水準にあり、21年予想PERは51倍、64倍に上るが、ジェフリーズは今後の高成長を背景に、割高感は段階的に払しょくされると指摘している。
このうち週明けから24日まで連日、上場来高値を更新している世茂服務は、良質な事業内容と高成長見通しで評価が高い。杭州野風物業服務有限公司の買収を通じ、物件管理面積を5月に大きく伸ばしたことも高評価の一因。中国国際金融によれば、買収対象の杭州野風物業服務は浙江省の有名企業であり、現地で管理契約の取得を強化するという同社戦略に合致した決定だったという。
また、融創服務は20年11月に上場したが、23日終値は27.2HKドルと、公開価格比で134%高。同社の場合は、◇新規の管理契約面積の取得状況が予想以上に好調(親会社の開発物件ではなく第三者契約が主体)、◇4月の買収による管理面積の拡大、◇親会社・融創中国(
01918)の開発ペースの加速――などが、アナリストらの強気見通しの理由だ。このほか、華潤万象生活は、不動産投資に強みを持つ優良デベロッパー、華潤置地(
01109)を親会社とする点で有利。マンションだけでなく、商業ビル管理の比重が大きいという特徴がある。
JPモルガンは直近リポートで、セクター全体の短期的な上昇余地を指摘。カバー銘柄11社のうち、世茂服務、金科智慧服務(
09666)、融創服務、永昇生活服務集団(
01995)の4銘柄をトップピックとした。目標株価をそれぞれ28.0HKドル、90.0HKドル、30.0HKドル、24.0HKドルに引き上げ、いずれも「オーバーウエート」の投資判断を付与している。JPモルガンはこのほか、恒大物業集団(
06666)、新城悦服務(
01755)、合景悠活集団、時代隣里(
09928)についても、強気判断を継続している。