中国国家統計局の16日の発表によると、21年1−3月の実質GDP成長率は前年同期比18.3%。市場コンセンサス予想の19.0%には届かなかったものの、今の形で集計を開始した1992年以来、四半期別で最も高い伸びを記録した。コロナ禍で都市封鎖や外出自粛を余儀なくされた前年同期からの反動が高成長の理由(20年1−3月の実質GDP成長率はマイナス6.8%)。ブルームバーグの分析によれば、19年同期と比較した過去2年間のGDP成長率は年率平均でおよそ5%と、ほぼ正常レベルに近い数字を示した。
この先、前年同期実績が上がるにつれ、GDP成長率は減速する見通しだが、21年通年については前年比8−9%を見込む声が優勢。70社を対象としたロイター社のコンセンサス予想は前年比8.6%。4−6月期以降は四半期ごとに、8.0%、6.4%、5.3%と推移する見通しという。
◆過去2年の年率平均では成長率5%、「正常化」は7−9月期か
コロナ後の20年4月以降の経済回復を支えたのは生産セクターであり、消費は出遅れていたが、21年1−3月の成長を後押ししたのは主に消費。小売売上高は1−3月に、前年同期比33.9%増を記録した。ただ、2年間の年率平均では4.2%増と、依然としてやや低調。正常化はまだ先との見方が強く、逆にいえば、さらに「のびしろ」が存在することになる。一方、1−3月の固定資産投資は前年同期比25.6%増で、2年間の年平均では2.9%増。鉱工業生産は同24.5%増、年平均で6.8%の伸びだった。
中国経済はコロナ後に世界に先駆けて急回復を遂げたが、それでもまだ完全に正常軌道に乗ったとは言えず、その“正常化”の時期について、光大証券は「7−9月期」を見込む。コロナ後の内需の回復に加え、海外でのパンデミックの収束と欧米の景気刺激策を受けた旺盛な外需が見込めることが理由という。
光大証券に限らず、中国経済の先行きに対しては基本的に楽観見通しが優勢だ。JPモルガンの朱超平ストラテジストは、消費を原動力に、正常化に向けた成長トレンドが年内続くとみる。ゴールドマン・サックスは欧米経済の力強い回復が中国の輸出の伸びを後押しするとして、21年のGDP成長率を前年比8.5%と予想。世帯収入の伸びも向こう数四半期にわたって続く見通しを示している。また、フィデリティは4月以降、サービス業が成長エンジンになるとの見方。4月の旅行市場の活況を指摘し、“リベンジ消費”が回復ペースの加速に寄与すると予想している。半面、ポストコロナ時代に持続的な経済成長を確保する上では、個人所得の増加ペースがカギになるとの見方だ。
◆「PPIの高進」と「不動産過熱」が懸念材料、政策余地が縮小か
ただ、安定成長見通しの中にも不安材料はある。雇用の弱さといった問題が残る中、当局は「回復基盤はいまだ強固ではない」との認識。引き締めへの大幅な政策転換は時期尚早としているが、その一方で、緩和をつづける上で足かせとなる「PPI(生産者物価指数)の上昇」と「不動産過熱の兆し」が急速に顕在化し始めた。政府当局は実際、この2点を注視しているもようだ。
うちPPIは、商品価格の騰勢を背景に、3月に前年同月比4.4%上昇。2年半ぶりの高い上昇率を記録し、短期的にはさらに加速するとの見方が強い。交通銀行・金融研究センターの劉学智シニア研究員は、国内経済の回復を受け、金融緩和の必要性は薄れつつあるとしながらも、最近の物価高を指摘。財政政策は影響を受けないものの、金融政策はある程度引き締めざるを得ないとの見方だ。今のところ、物価上昇傾向が顕著なのは川上であって、「川下への影響は限定的」(国家統計局)だが、中海晟融の張一チーフエコノミストは、「旺盛な需要の下、商品相場がさらに上昇するのは確実であり、インフレ傾向は川上から川下に波及する」と予想。この先、政策の舵取りが難しさを増すとみている。
もう一つ、不動産価格を見ると、主要70都市の新築住宅価格は3月に前年同月比4.6%高(統計局発表値に基づいてロイター社が算出)と、半年ぶりの高い伸びを示した。前月比でも0.5%高と、7カ月ぶりの上昇率。中央・地方政府はここに来て、相次いで締め付けに動き出した。京東科技の沈建光チーフエコノミストは不動産過熱だけでなく、地方債務の増大、中小銀行の不良債権比率の上昇などを指摘。最近の監督管理当局の動きから、「金融リスクの抑制措置はすでに“常態化”段階に入った」との見方を明らかにしている。