中国の旧正月シーズンの映画市場が空前の活況に沸いている。アリババ・ピクチャーズ(
01060)の映画関連プラットフォーム「灯塔」のリアルタイムデータによると、旧正月連休(2月11−17日)中の16日20時56分時点で、予約販売を含めた興行収入が70億元を突破。19年同期の58億元を上回り、過去最多を記録した。21年年初からの累計では、すでに100億元の大台に乗せている。一時の新型コロナの感染再燃を受けた旧正月中の移動自粛が、映画ブームの一因。中国電影家協会の尹鴻副主席によれば、ほかに娯楽消費の底固さや、今季の公開作品の多様性、さらにはチケット料金の大幅値上げなどが、興行収入を押し上げたという。
映画市場の予想以上の好況を受け、16日の香港市場ではカナダ系の映写システム会社、IMAXチャイナ(
01970)と、映画関連事業を幅広く手掛けるアリババ・ピクチャーズ(
01060)が前日比30%超急伸。終値ベースでそろって1年超ぶりの高値を記録した。映画オンラインチケット最大手であり、コンテンツ制作などにも携わる猫眼娯楽(
01896)も10%近く値上がりし、営業時間中に1年超ぶりの高値を付ける場面があった。
◆「唐人街探案3」と「ニイハオ、李煥英」の人気がダントツ
中国の年間興収の最高記録は19年に樹立した643億元。コロナ禍で映画館が7月まで営業停止となった20年には前年比68%減の204億元(前膽産業研究院集計)に沈んだが、このままいけば、21年には再び記録を更新する見通しだ。国内の映画興収は旧正月前から好調で、20年12月には入場制限やハリウッド大作の不在にもかかわらず、前年同月比28%増。21年1月には前年同月実績の低さもあり、140%増を記録していた。旧正月期にはチケット料金値上げが興収押し上げの一因となったが、業界関係者によれば、映画館側の経営上の理由もあり、年内にはさらに大幅な値上げが実施される見通しという。
旧正月映画の興行収入を作品別に見ると、16日21時前時点で、「唐人街探案3」(邦題:僕はチャイナタウンの名探偵3)が33億6000万元でトップ。「ニイハオ、李煥英」が22億元で2位。「刺殺小説家」が5億元弱で3位。日本が舞台となったシリーズ最後の作品「唐人街探案3」と、タイムトラベルコメディ「ニイハオ、李煥英」の人気が際立っている。このうち「唐人街探案3」は万達電影(
002739)傘下の万達影視伝媒をはじめ、23社が配給している作品。「ニイハオ、李煥英」は閲文集団(
00772)傘下の新麗伝媒や北京京西文化旅遊(
000802)、アリババ・ピクチャーズなどが配給しており、アリババはほかに「刺殺小説家」の配給にも従事する。また、猫眼娯楽グループは上位3作品すべてに携わっている。
モルガン・スタンレーはうち、猫眼娯楽に対して強気。最新リポートで目標株価を19HKドルから20HKドルに引き上げ、「オーバーウエート」の投資判断を継続した。同社が制作に関わり、主要配給会社となった「ニイハオ、李煥英」の興収が事前予想を大幅に上回ったと指摘。この作品だけで1億−2億元の利益上乗せが期待できるとみている。
◆IMAXも絶好調、21年の業績急回復に期待
旧正月連休の活況はこのほか、中国唯一のIMAXシステムのプラットフォームであるIMAXチャイナにとっても大きな追い風。興収トップの「唐人街探案3」は全編IMAX規格であり、3位の「刺殺小説家」も1時間超のIMAX仕様を含む。同社によれば、旧正月連休最初の週末の興収は19年同期比で45%増の1億6000万元(14日まで)。うち「唐人街探案3」が1億5000万元に上り、IMAXシアターにおける国産映画の同時期の興収としては、過去最高を更新したという。同社幹部は「中国での最近の業績は記録づくめ。旧正月の好調は事前の最も楽観的な予測すら上回った」とコメントしている。
IMAXの業績は営業停止の長期化で20年上期に大きく悪化し、売上高は前年同期比89%減の666万米ドル。純損益は1550万米ドルの赤字だった。中国国際金融は20年本決算について、2773万米ドルの純損失を見込みながらも、21年の急回復を予想。同社に対する「アウトパフォーム」の投資判断を継続している。
このほか、JPモルガンは国内全体の旧正月4日間の興収が前年同期を34%上回ったとした上で、「唐人街探案3」と「ニイハオ、李煥英」の突出した人気に言及。コンテンツの質が興収増の原動力となっている現状を指摘した。興収拡大による主な恩恵銘柄として、アリババ・ピクチャーズ、猫眼娯楽、IMAXチャイナのほか、万達電影や中国電影(
600977)を挙げている。