香港株式市場の主要指標ハンセン指数は年初から12月24日までに6.4%値下がりし、世界の主要市場をアンダーパフォームした。パンデミックの深刻化に加え、米中摩擦の長期化や、SMIC(
00981)などの中国企業を標的としたトランプ米政権の“駆け込み”制裁、さらには中国国内のネット企業規制などが響いたもよう。ただ、続く21年に関しては、世界的な量的緩和の持続や、世界経済の回復期待、米中摩擦の緩和期待などから、総じて強気見通しが目立つ。証券各社が設定した21年末のハンセン指数目標はおおむね28500−30700ポイントの範囲となっており、12月24日終値(26386.56ポイント)比では8−16%の上値水準。各社の予測を見る限り、まずは28000ポイントの再度の突破が焦点となりそうだ。
◆年初来6%下落、量的緩和や世界経済の回復が21年の支援材料に
20年を振り返ると、ハンセン指数は新型コロナウイルスの蔓延を受けた世界株安を背景に、3月に3年3カ月ぶりの低水準まで下げ、22000ポイント割れ。その後は反転上昇したものの、9月後半には欧州での感染再拡大を受けて再び調整。11月下旬までの約2カ月は、本土経済の回復や米国などの量的緩和の継続を背景に回復の勢いを見せたが、ここ1カ月は再びさえない相場展開となり、12月24日までに年初の水準を回復するには至らなかった。ハンセン指数のウエート上位に並ぶ有力ネット銘柄が、中国国内の締め付け政策のあおりで下落したことや、英国で報告されたコロナ変異種に対する警戒感などが重しとなった。
それでも、ワクチンの実用化を受けたパンデミックの収束期待や世界的な量的緩和の継続観測などから、証券各社が示した21年末のハンセン指数目標は総じて強気であり、30000ポイント周辺が主流。スイスのプライベートバンク、EFGが30700ポイントの高水準に設定したほか、クレディ・スイスが30000ポイント、HSBCが29970ポイントなどを見込んでいる。仮に30000ポイントの大台を回復すれば、19年5月初め以来となる。一方、上海・深セン両市場で取引されている上位300銘柄をカバーするA株指標、CSI300(滬深300)指数に関しては、クレディ・スイスとゴールドマン・サックスがいずれも5600ポイントとの目標値を設定。これは25日終値に対し、約11%の上値に当たる。
◆ハンセン銘柄に値ごろ感、政策恩恵銘柄や回復テーマ株が焦点
香港市場にとって21年の支援材料は、世界的な量的緩和の継続、世界経済の回復期待、中国経済の成長観測、米中関係の改善期待。このほか、一段の元高観測(中国経済に対する強気見通しに由来)や香港上場銘柄の低バリュエーションなども強気見通しの要因となっている。まず、“V字回復”を遂げる中国経済に関しては引き続き楽観見通しが強く、21年の実質GDP成長率に関しては前年比8−9%との予測が優勢。世界銀行は23日、同7.9%との成長見通しを明らかにした。
一方、米中関係に関しては、1月20日の政権交代後も「米国の対中強硬姿勢は変わらない」との見方が強いものの、バイデン次期大統領の外交姿勢はトランプ大統領より穏健。懲罰的措置には否定的とされ、両国関係が結果的に改善に向かうとの期待も強い。実際に米中対立が緩和に向かえば、本土・香港市場への資金流入が加速する見通しだ。このほか、元高は中国の輸出に不利とはいえ、基本的に中国経済のファンダメンタルズに対する高評価の表れと受け止められ、本土・香港市場にとっては支援材料となりやすい。JPモルガンは21年中に1米ドル=6.35元、年末には6.25元まで元高が進むとみている。
また、香港上場銘柄の相対的な低バリュエーションも、21年の相場上昇期待の一因。ブルームバーグのコンセンサス予想に基づくハンセン指数銘柄の21年予想PERは、現時点で11.9倍(上海総合指数は12.8倍)。『香港経済日報』によれば、台湾株の16.8倍、日本株の20.6倍、米S&P500指数の21.7倍を大きく下回るという。クレディ・スイスは、「香港株のバリュエーションは現時点でヒストリカルな低水準にある」と指摘し、この先の大幅な上値余地に言及している。
なお、『香港経済日報』が挙げた21年の3大テーマは政策恩恵銘柄、景気回復テーマ株、ニューエコノミー株。このうち政策恩恵銘柄の中では特にクリーンエネルギーの注目度が高く、新エネルギー車や太陽光発電などが一大テーマとなりそうだ。また、回復テーマの筆頭はケリー・ロジスティクス(
00636)などの物流銘柄。ニューエコノミーではネット大手が政策的な逆風に直面する中、スマホの小米集団(
01810)や、スマホ部品の舜宇光学科技(
02382)などが焦点となる見通しという。