新型肺炎が世界的な広がりを見せる中でリスク回避が鮮明となり、週明けから世界株安の様相となったが、その半面、米国債とともに金先物相場の騰勢が強まっている。COMEX(ニューヨーク商品取引所)の金先物価格は2月18日、13年以来7年ぶりに1トロイオンス=1600米ドルを突破し、25日には一時、1680米ドル台に乗せた。米中貿易戦争やイラン情勢の緊張を受け、19年5月から上向きに推移していた金先物相場が先週から、一段高の局面を迎えた格好だ。
25日終値は前日比で反落したが、新型肺炎の感染拡大懸念や、それに伴う株安、米利下げ観測などを理由に、金相場の一段高を見込む声が目立ち、状況次第ではこの先、1トロイオンス=2000米ドル到達を視野に入れた展開となりそうだ。これに伴い、買われる展開となっているのが産金銘柄。『香港経済日報』は金相場に対する産金銘柄のアウトパフォームもあるとみて、山東黄金鉱業(
01787/
600547)や招金鉱業(
01818)に対して強気。ほかに金地金価格連動型のETF(上場投資信託)、SPDRゴールド・トラスト(
02840)なども投資選択肢になり得るとしている。
◆12−24カ月内に2000米ドルの大台到達へ=シティ
新型肺炎の感染状況は中国本土で一時より落ちつき、感染者数は25日24時時点で7万8064人。前日比で406人増えたものの、その多くが湖北省であり、その他省・直轄市・自治区で報告された新たな事例はわずか5人にとどまった。その一方、韓国やイタリア、イランなどで感染者数が急拡大し、25日には新たにスイスや豪州でも感染事例が報告された。新型肺炎をめぐる情勢は、すでに世界規模で新たな局面を迎えたもよう。中国やアジアにとどまらず、欧米にも波及し、本格的にパンデミック化するとの警戒感がここに来て急速に高まっている。
こうした中、不況時に弱いとされる銅は値下がりしており、原油安も鮮明。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物(WTI先物4月限)の25日終値は、前日比1.53ドル安の1バレル=49.9米ドルと、再び50の大台を割り込んだ。対照的に、安全資産である金価格は先週から週明けにかけて急伸し、この先の一段高観測もかなり強い。UBSは1トロイオンス=1700−1800米ドルに上向く可能性を指摘しているが、シティグループはさらに強気であり、向こう12−24カ月中に2000米ドルに達するとの見方だ。世界最大のヘッジファンドであるブリッジウオーター・アソシエイツも金価格の2000米ドル突破と過去最高値更新を見込み、金を投資ポートフォリオの中心とすることを推奨している。また、香港の著名アナリストでもある訊匯証券のCEO、沈振盈氏は、年内に1900−2000米ドルまで値上がりするとみる。
沈氏によれば、米国の量的緩和(QE)を背景にドルインデックス(複数の主要国通貨に対する米ドルの総合的な価値を示す)は現在ほぼピークに達しており、この先、ドル安方向に触れると、ドルと逆相関関係にある金相場は上向く。また、各国の中央銀行が金準備の積み増しに動いていることや、資産価値の保持とインフレヘッジ目的の金需要が見込まれることなども、一段の金高を見込む理由という。
このほか、『香港経済日報』研究部は金先物の2000米ドル到達を基本シナリオとし、それ以上の大幅高もあり得るとの見方。その主な理由として、日本円の安全資産としての価値に疑問符が付いた点を挙げ、円から金へ資金が流れる可能性を指摘している。
◆金相場への感応度の高い招金鉱業と山東黄金鉱業などが焦点に
香港上場の産金銘柄は、招金鉱業(
01818)や山東黄金鉱業(
01787/
600547)、中国黄金国際(
02099)、紫金鉱業集団(
02899/
601899)などで、金ETFのSPDRゴールド・トラスト(
02840)も選択肢の一つ。A株の産金銘柄は赤峰吉隆黄金鉱業(
600988)、銀泰資源(
000975)、中金黄金(
600489)、湖南黄金(
002155)などの顔ぶれとなる。
『香港経済日報』は香港上場の産金銘柄のうち、金採掘業務の比重が大きく、金相場の上昇がそのまま追い風となる山東黄金鉱業を推奨している。同社以外では、招金鉱業も金相場に対する感応度の高い銘柄の一つ。クレディ・スイスによれば、過去の金高局面において、この2銘柄の株価上昇率は金相場をアウトパフォームした経緯があった。香港地場系の智易東方証券、金利豊証券はそれぞれ、招金鉱業の目標株価を9.90HKドル、9.70HKドルに設定し、いずれも「買い」を推奨している。