中国国家統計局の17日の発表によると、19年1−3月期の実質GDP(国内総生産)成長率は前年同期比6.4%と、前四半期比で横ばいとなり、市場予想の6.3%を上回った。18年10−12月まで3四半期連続で減速した後、米中休戦や政府の景気てこ入れを背景に、まずは下げ止まった格好だ。また、同時に発表された鉱工業生産、小売売上高などの最新指標も予想を上振れ、中でも鉱工業生産は14年7月以来の高い伸びを記録した。これまでに発表された製造業・非製造業PMI(購買担当者景気指数)、輸出、PPI(生産者物価指数)を含め、3月の指標は軒並み好調。旧正月要因によるブレが一部、3月の数字に影響したとはいえ、政策てこ入れを受けた国内経済の底打ち感が強く示される形となった。
現段階では政策要因による底上げ効果が大きく、中国経済が本格的に底入れしたとみるのはやや時期尚早。このまま自律成長軌道に乗るか、逆に腰折れの可能性があるのかどうか、4月以降の状況をさらに見極める必要がありそうだ。国家統計局は「前向きな要素が増えている」とする一方、世界経済や国際貿易の減速といった外部の不確定要素に言及し、「国内経済の下押し圧力は依然存在する」との認識を明らかにしている。
◆3月の鉱工業生産がポジティブサプライズ、小売統計も予想上振れ
17日発表の最新統計を見ると、1−3月のGDPは前年同期比で実質6.4%増と、政府の通年目標「6−6.5%」のほぼ上限水準に達した。金融緩和やインフラ投資の強化をはじめとする積極財政が寄与し、“三頭建て馬車”がいずれも経済成長に貢献。最終消費支出(消費)、資本形成(投資)、純輸出の寄与率が65.1%、12.1%、22.8%に達した。米中協議がまだ決着していない現段階で、これまで経済成長の足を引っ張っていた純輸出の寄与率が大きくプラスに転じるという予想外の内容だった。
また、同時に発表された主要指標の中では、1−3月の固定資産投資が市場の予想通りとなる前年同期比6.3%増。製造業投資が4.6%に減速する中、市況回復を見込んだ不動産開発投資の好調や、積極財政策を背景としたインフラ投資の緩やかな回復が寄与し、1−2月の同6.1%から加速した。
一方、最大のサプライズは鉱工業生産。3月に前年同月比8.5%増と、市場予想の5.9%を大きく上回り、約4年半ぶりの高い伸びを記録した。旧正月の日付けが昨年から11日間早まり、生産活動が前倒しに全面再開していたことが一部寄与したもよう。また、品目別でセメント(同22.2%増)が最大の伸びを記録したことからみて、インフラ投資、不動産開発投資の加速が3月の好調を後押しした可能性が高い。これで、1−3月の鉱工業生産伸び率は前年同期比6.5%増。1年前の同6.8%増から減速したとはいえ、前四半期の同5.7%から明らかに加速傾向を示した。国家統計局の毛盛勇報道官は、3月の急増ペースを維持することは困難としながらも、4月以降も「健全かつ安定的な伸びを維持するだけの条件は備わっている」との見解を示した。
このほか、小売売上高も3月に8.7%増と、市場予想の8.4%を上回り、18年9月以来の最も高い伸びを記録した(1−3月では8.3%増)。年初の減税などを背景に、消費にも明るさが見え、3月には需給双方の指標がそろって上向く形となった。
◆「実体経済支援」もばらまき否定、すでに政策調整の兆候も
現在の経済情勢に対する市場関係者らの見解は分かれており、国泰君安証券は楽観的。「1−2月が国内経済の底。すでに最悪期を脱した」とみている。一方、海通証券の姜超マクロアナリストは相対的に慎重。インフラ投資の持ち直しや消費の改善とは裏腹に、民間投資、製造業投資が減速している現状や、不動産投資の減速リスクを指摘。現時点では景気安定のシグナルが見えただけで、底打ち判断は尚早とし、4−6月期も下押し圧力が続く可能性を指摘している。
経済情勢に対して楽観・慎重論が交錯する中、政策に関する最新情報もプラス、マイナスが混在している。李克強首相が招集した17日の国務院常務会議は、「金融面から実体経済への支援を強化する」との方針を確認。国家発展改革委員会が自動車、家電などの買い替え促進策について意見を募集しているとの情報も伝わった。その一方、中国人民銀行は直近の例会で、「通貨供給の水門の舵をしっかり握っておく必要がある」との表現で、過剰な緩和を控える方針を再確認。国務院常務会議も、ばらまき式の政策は取らないとの意向を繰り返した。実際、3月の指標に政策効果が表れ、景気下押し圧力が軽減したことで、マーケットでは金融面を中心に、一段のてこ入れ期待が後退しつつある。
また、中国人民銀行は17日、リバースレポ(売り戻し条件付き債券購入)を通じて短期資金を供給する半面、中期貸出制度(MLF)を通じて資金吸い上げを行っており、これも市場の政策期待を後退させた一因。社会融資総量や人民元新規融資といった3月の金融指標がいずれも予想を大きく上回った後、人民銀行が「政策基調の“中立”方向への調整に動いた」(華泰証券)とみられ、西南証券はこの日の動きを「金融政策の調整のシグナル」と受け止めている。少なくとも預金準備率の再引き下げに関しては、「短期的には期待薄」との見方が優勢だ。また、一部過熱の兆しを受け、金融政策の引き締め方向への調整も視野に入ったとの見方が一部にあり、金融政策がどう振れるかが、この先、焦点の一つとなりそうだ。