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2015-05-21 中国/トピック/その他
「中国製造2025」:10大重点産業に新世代IT・ロボットなど、今後10年で“強国”に
 中国の内閣に当たる国務院が19日、「中国製造2025」(メイド・イン・チャイナ2025)の概要や指針を発表したことで、市場では新世代型の製造銘柄が新たな投資テーマして急浮上している。この戦略は李克強首相が3月の政府活動報告の中で初めて言及した長期成長戦略であり、「製造大国」から「製造強国」への転身を図る狙い。10年タームで3つの段階を設け、まずは2025年までに「製造強国」入りを果たす計画だ。さらに2035年までに世界の「製造強国」中位レベルを目指し、建国100年に当たる2049年にはトップレベルに到達することが目標。この先30年余りをかけて “世界最強”を目指すことになる。

 シティグループによれば、「中国製造2025」はドイツの「インダストリー4.0」に倣ったもので、製造業を世界トップクラスに引き上げたいとする中国政府の意志が色濃く反映されているという。ただ、人口ボーナス(生産年齢人口の割合が高く、人口構造が経済成長にプラス影響を与える状態)の消失が現実のものとなる中、中国としては「世界の工場」からの脱却を迫られたとの側面もあるもよう。本土紙『京華時報』は「中国が世界一の製造大国となって5年を経たが、メイド・イン・チャイナの付加価値は依然極めて低く、世界レベルの企業・製品も数えるほどだ」と指摘。中国の強みだった環境資源や人口ボーナスもすでに赤字化しつつある状況下で、「伝統的な製造業の成長モデルはもはや持続不可能になった」との見方を明らかにしている。

◆公平な競争環境の整備や体制改革が不可欠

 国務院の発表によれば、製造強国へのシフトを実現させるために必要となるのは以下の9点。◇イノベーション力の向上、◇IT化と工業化の密接な融合、◇基礎能力の強化、◇高品質ブランドの建設強化、◇全面的なエコ化の推進、◇産業構造調整、◇国際化、◇サービス型製造業と生産型サービスの発展促進、◇重点領域の発展――。さらに目標達成に向けては、体制・メカニズム改革の深化や公平な競争環境の整備、資金面での支援、財政政策面からの支援、人材育成、中小・零細企業政策の整備、さらに製造業の一段の対外開放が求められるという。

 こうした方針とともに発表された「中国製造2025」の10大重点産業は、新世代ITや数値制御(NC)装置/ロボット、海洋エンジニアリング、新素材などで、香港株式市場でもともと注目度の高い低燃費車/新エネルギー車や、バイオ医薬、先進軌道交通設備などもリスト入りを果たした。この10大分野の大手にとっては同戦略が確実に追い風となりそうだ。

◆「業界統廃合」加速へ、個別ではレノボなどが有力

 政府が今回、向こう10年間の青写真を示したことで、国内製造業界では今後確実に、イノベーションや高付加価値化が趨勢となる見込み。同時に業界統廃合の加速や業界寡占化が進む可能性が出てきた。銀河証券は最大手の優位を見込み、「機械設備分野などの上場企業はこの先、生き残りをかけて布陣を強化する」との見方だ。また、同戦略は長期のGDP底上げにも寄与する見込み。平安証券は同戦略による経済効果が、向こう20年間で3兆米ドルに達するとの試算結果を明らかにしている。

 セクター別に見ると、「中国製造2025」の下、まず技術アップグレード面で成果が期待されるのは鉄道分野と衛星関連分野。東方証券の邵宇チーフエコノミスト兼チーフストラテジストは両分野について「すでにある程度、高付加価値化を実現しており、短期的に成果を挙げる可能性が高い」との見方だ。また、DBS(香港)のトウ威信・証券ストラテジー顧問は「中国製造2025」銘柄に投資資金がシフトする見通しを示すとともに、ブランド力の高い銘柄を有力視。PC最大手のレノボグループ(00992)をその代表例に挙げた。

 一方、シティグループはイノベーション能力やブランド力、発展持続力、管理の質などの各項目を評価した上で、「中国製造2025」の恩恵銘柄として11銘柄をピックアップしている。具体的にはレノボグループや通信設備最大手の中興通訊(00763)、風力発電設備大手の新疆金風科技(02208)、さらにSUV分野のトップメーカー長城汽車(02333)などで、この11銘柄に対して「買い」の投資判断を付与している。


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