中国工商銀行(
01398/
601398)が株式取引を停止中の錦州銀行(
00416)の大株主になることが分かり、香港市場では中国本土の大手銀行の業績悪化が警戒されている。中国工商銀行などの国有大手銀行が中国金融当局の意向を受け、経営が悪化した中小銀行の救済役を担うケースが増えるとの観測が浮上した。5月に実質国有化された包商銀行の業務を中国建設銀行(
00939/
601939)が受託したのに続く措置との見方だ。中国工商銀行が支払う錦州銀行株の取得額が割高との懸念も広がった。
中国工商銀行が28日に発表した計画では、全額出資子会社の工銀金融資産投資が最大30億元を投じて中企発展投資(北京)などから錦州銀行内資株を譲り受け、錦州銀行の発行済み株式の10.82%を握る。錦州銀行の2018年6月中間決算報告によれば、中企発展投資(北京)は持ち株比率4.68%の筆頭株主。株式譲渡に伴い、中国工商銀行が新たな筆頭株主になる。
錦州銀行は28日に発表した公告で、株式譲渡の合意は「地方政府の支持と指導の下」で成立したと説明しており、当局主導の出資であることは明らかだ。中国工商銀行のほかに、中国政府系不良債権処理会社の中国信達資産管理(
01359)の全額出資子会社と、中国長城資産管理が内資株を取得する。中国信達資産管理の持ち株比率は6.49%となる見込み。
錦州銀行は1997年設立の都市商業銀行(日本の地銀に相当)。2018年12月本決算の報告が遅延し、2019年4月1日にH株の取引を停止した。『香港経済日報』によると、華泰金融の香港株金融業主任アナリスト、陳シュ瑾氏は、今回の合意発表で大型銀行が背負う社会的責任が市場で意識されたと指摘。資産内容が良くない中小銀行を買収すれば、長期的には大型銀行の資産と自己資本比率も悪化するとの懸念が広がったとした。
中国工商銀行の投資額(30億元)は、錦州銀行株の18年上期のPBR(株価純資産倍率)を0.5倍以下と評価したことになる。陳氏は、香港市場で活発に取引され、資産内容が健全な農業商業銀行でもPBRは約0.5倍だと指摘し、錦州銀行株の取得額は「お買い得とは言えない」とした。さらに、錦州銀行のバランスシートが18年下期に大幅に縮小した可能性や、乱脈融資問題を考慮すべきだと強調した。
中国工商銀行の株価は日本時間午後0時43分現在、前日比0.37%高の5.41HKドルで推移している。