翌年の経済政策基調を策定する中央経済工作会議が20日、3日間の日程を終えて閉幕したが、この場では大方の予想通り、基本路線として「穏中求進」(安定を保ちつつ前進を求める)を継続する方針が確定した。また、10月の第19回党大会で習近平国家主席が示した通り、従来のような“量的拡大”ではなく“質重視”の経済発展を目指すことを確認。さらに18年も積極財政政策と中立的な金融政策を継続する方針を決めた。重要政策任務に据えられたのは、“3大攻略戦”こと「リスク防止」「貧困脱却」「環境汚染防止」。このほか、貿易面での全面開放や賃貸制度の整備を含む住宅改革など、“8つの重点任務”が策定されている。
18年は中国にとって改革開放40周年に当たり、5年に1度の党大会で習近平国家主席が示した思想・精神に基づく政策運営が開局を迎える年。また、全面的な小康社会(そこそこゆとりある社会)の建設や「第13次5カ年計画」(16−20年)の実行に向けてカギとなる1年でもあり、会議の場では、改革開放や経済の質的強化、イノベーション化戦略を本格化させる必要があるとの認識を共有したという。
◆金融リスク防止も企業の債務解消策は「後退」か
党・政府指導部はこの会議において、“3大攻略戦”の筆頭に「リスク防止」を据えたが、その主眼は金融システミックリスクの防止。金融と実体経済、金融と不動産、さらに金融システム内において好循環の確保することでリスクを抑制するとともに、違法活動の取り締まりを強化、さらに監督管理制度の最適化を進めるとした。こうした政策方針を見る限り、18年も前年に続き、金融面での監督強化が続く見通しだ。平安証券はリスク防止が重点政策となった以上、金融緩和にはもはや期待しにくいとの見方。中国国際金融も「金融政策は中立的とされたが、実際にはやや引き締め気味の中立路線になる」との見通しを明らかにしている。
ただ、『ウォールストリートジャーナル』などの報道によると、金融リスク防止が最重点任務となる半面、企業を対象としたレバレッジ(過剰債務)解消策は逆に弱体化したもようだ。指導部は1年前の同会議で「企業の負債低減」を最重点に据えたが、今回の会議ではこの部分が立ち消え、供給側改革を表す、いわゆる「三去一降一補」(過剰設備の解消、不動産在庫の解消、レバレッジ解消、企業コスト引き下げ、脆弱分野の補強)の一部としてのみ、レバレッジ解消策が残されたという。その背景にあるとみられるのは、債務削減が経済成長の重石になるとの警戒感。米国の保護貿易主義政策や国内不動産市場といった不確実要因がくすぶる中、政府指導部はやや慎重姿勢に転じたとされている。
◆住宅賃貸市場の発展に期待、不動産税導入の可能性も
一方、一連の政策方針の中で、注目度の高い項目の一つが不動産政策。この1年間の不動産引き締めを受け、住宅市場の過熱感が和らぐ中、不動産市場の健全化に向けた住宅制度改革や長期メカニズムの構築を加速させるとの方針を決定した。
この中で特に明確に指針が示されたのは、新たな制度の構築による住宅賃貸市場の発展支援。今後は賃貸市場の成長期待が不動産セクターの支援材料となる見通しだ。デベロッパー各社はすでにこの分野への参入に向けて動き出しており、特に資金力に優れた大手にとって新たな成長けん引役になるとの期待が大きい。ただ、不動産政策に関しては、もう一つ、不動産税導入の可能性も注目ポイント。最近では財政部の肖捷部長が段階的な不動産税の導入方針に言及しており、関連政策動向も今後の焦点となりそうだ。
◆18年のGDP成長目標、17年と同じ「前年比6.5%前後」か
このほか、中央経済工作会議の場で決定したとみられる18年のGDP目標は、同年3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で明らかにされる見通しだが、17年の「前年比6.5%前後」と同水準になるとの見方が優勢だ。政府系シンクタンクの中国社会科学院は20日発表した報告書の中で、18年のGDP目標が前年並みの「前年比6.5%前後」に設定されると予想。同時に、18年のGDP成長率が前年比6.7%に達するとの強気見通しを示した(17年予想は6.8%)。
中国社会科学院はまた、18年のCPI(消費者物価指数)、PPI(生産者物価指数)上昇率をそれぞれ前年比2%、3.6%と予想。固定資産投資が前年比6.3%増に減速する半面、小売売上高は同10.1%増を確保するとの見通しを示している。さらに、消費アップグレードや環境保護の強化、新興産業の躍進などが焦点になるとみて、国内A株市場の緩やかな上昇基調を予想。上海総合指数は3200−3700ポイントのレンジで推移するとの予測を明らかにしている。