アジア経済について政財界の要人が議論する国際会議「博鰲(ボアオ)アジアフォーラム」の開催を受け、中国の対外発展戦略「一帯一路」に対するマーケットの期待が一段と高まっている。中国政府がこのほど、専門サイトの「中国一帯一路網」(www.yidaiyilu.gov.cn)を立ち上げたことや、5月に「一帯一路サミット」の開催を予定していることなども、市場の期待値を押し上げている要因。当面は「一帯一路」が再び、主要投資テーマとなる可能性が高く、ゼネコンや建材、建設機械、港湾などの関連銘柄に恩恵が及ぶ見通しだ。
「一帯一路」は習近平国家主席が13年に構想を明らかにした経済ベルト戦略。かつて交易路として栄えたシルクロードになぞらえ、中国を起点に中央アジアを通り、ロシア、欧州に至る陸路の経済ベルト「一帯」を建設。さらに中国沿海部から南シナ海を通り、インド洋、アラビア半島に至る海上ルート「一路」を構築するとの戦略だ。トランプ米大統領の誕生を受けて米国との通商関係に不透明感がくすぶる中、中国にとっては西方に目を向け、自国経済圏の広がりを目指す同戦略の重要性がこれまでになく高まっている。また、欧米を中心とした反グローバル主義の広がりが、中国の対外戦略にとっては追い風になるとの見方も強い。
◆一帯一路は“中国版グローバル化構想”、5月にサミット開催へ
中国海南省の博鰲では25日、「博鰲アジアフォーラム」が開幕したが、同フォーラムの周文重秘書長はこの場で、“中国版グローバル化構想”として、改めて「一帯一路」を紹介。国務院直属の中央企業が「一帯一路」向け投資を加速させていることや、同戦略に絡み、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の参加国・地域が70に拡大したことなどを明らかにした。
これに先立つ3月前半の全国人民代表大会(国会に相当)会期中に鍾山商務部長が語ったところによれば、「一帯一路」は過去3年間、以下のような成果を挙げたという。
◇「一帯一路」に対して積極的な姿勢を示した国や国際組織は100余りを数え、中国との経済協力協定を交わした国は50を超えた
◇中国と「一帯一路」周辺国家との輸出入総額は16年に6兆3000億元に達し、輸出入全体を上回る伸びを遂げた
◇周辺国家に対する中国の直接投資は累計145億米ドルを記録。中国企業は20カ国強と56の経済貿易合作区を建設し、累計投資額は185億米ドルを超えた
また、中国当局はこのほど専門サイト「中国一帯一路網」を立ち上げたが、この場では同戦略の主旨を紹介するとともに、最新の成果をアップデートしてく方針。「一帯一路」建設に向けた情報提供・相互交流プラットフォームと位置づける。今のところ中国語、英語の2カ国語だが、年内にはロシア語、フランス語、アラビア語、スペイン語などのページを立ち上げ、言語においても世界の大部分の地域をカバーする計画という。
「一帯一路」戦略が始動して3年、海通証券は政策メカニズムの整備に伴い、経済効果が徐々に顕在化しつつあるとの見方だ。5月に開かれる「一帯一路」サミットでは、さらに多くの支援策が発表されるとみている。
◆インフラ建設銘柄に恩恵、中国交通建設や中国建築国際に強気見通し
個別銘柄に目を向けると、「一帯一路」恩恵銘柄の筆頭格はゼネコンなどのインフラ建設各社。ゴールドマン・サックスは21日のリポートで、ゼネコン大手の足元の受注好調を指摘し、向こう数年間にわたる収益化を予想。中でも海外事業に強みを持つ業界3位の中国交通建設(
01800)の目標株価を10.75HKドルとし、「買い」を推奨した。このほか、中国建築国際(
03311)の投資判断を15.3HKドルに設定し、「コンビクション・バイ」(強い買い)を推奨。一方、中国鉄建(
01186)、中国中鉄(
00390)のゼネコン大手2社に関しては、目標株価をそれぞれ9.3HKドル、6.3HKドルとし、いずれも「中立」判断を付与している。
また、ドイツ銀行もインフラ建設セクターに対して強気。今月上旬のリポートで、ゴールドマン・サックスと同様、中国交通建設と中国建築国際に対して強気見通しを示し、両銘柄をトップピックとした(目標株価は順に13.71HKドル、16.06HKドル)。
一方、セメントも「一帯一路」恩恵セクターの一つであり、『香港経済日報』は中でも、華潤セメント(
01313)を有望視している。広東省を本拠地とし、雲南省にも生産拠点を置く同社は、「一帯一路」エリアでの発展機会をうかがい、すでに国際部門を創設済みだ。また、セメント銘柄にとっては国内のインフラ投資の高止まりもプラス。華潤セメントに対してはドイツ銀行、CLSA、HSBC、中信建設、中銀国際がいずれも「買い」を推奨し、目標株価をそれぞれ5.26HKドル、5.1HKドル、5.0HKドル、5.0HKドル、5.0HKドルに設定した。また、シティグループも16日、華潤セメントの目標株価を5.0HKドルに引き上げ、投資判断を「買い」にアップグレード。ほかに、安徽コンチセメント(
00914)、北京金隅(
02009)に対しても「買い」の投資判断を付与している(目標株価は順に31.5HKドル、4.8HKドル)。