中国の主要都市は国慶節(10月1日)の連休前後に相次いで不動産引き締めに動いたが、10月の価格統計には早くもその効果が表れ、都市部全域で過熱感の後退がみられた。国家統計局の18日の発表によると、主要70都市のうち新築住宅価格が10月に前月を上回ったのは62都市で、前月から1都市減少。下落したのは7都市で、前月から1都市増加した(横ばいが1都市)。この数字を見る限り、ほとんど変化は見受けられないが、新築価格を10月前半、後半に分けて見ると、特に過熱傾向が鮮明だった1線・2線級の主要都市部で価格動向の変化が顕著。まずは10月前半時点で、深セン、成都の新築住宅価格が前月比で下落に転じ、月後半には北京、天津、上海、アモイ、鄭州の5都市が続いた。
また、統計局のデータを基にロイター社が算出している70都市の平均価格は、10月に前月比1.1%高(前年同月比では12.3%高)。これで18カ月連続の値上がりとなったものの、9月の同2.1%高に比べ、明らかに勢いが後退した。その背景にあるのは、物件の売れ行き減速。克而瑞研究(CRIC)の最新報告によると、不動産デベロッパー100強の10月の販売額は前月比で10%減。うち49社の販売額が2割以上落ち込んだという。
◆引き締め策に「即効性」、土地バブルも沈静化へ
国慶節連休前から現在までに、20余りの都市が引き締め策を導入したが、その内容は主に、「住宅購入制限」の導入やローン引き締め(頭金比率の下限規定や貸付比率の上限規定)。中央政府も不動産市場への資金の不正流入や理財(資産運用)資金による不動産投資を防ぐなどの措置を講じており、中央・地方一体の引き締めが功を奏する形となった。不動産代理の中原地産の張大偉チーフアナリストは、「今回の引き締めは住宅価格の高騰を招いたレバレッジ(過剰債務)の急拡大を抑える点で、即効性があった」との見方だ。武漢、杭州、深センを含む一部の地方政府は11月に入ってから、さらに引き締めを強化しており、政策の効力はこの先さらに鮮明となる可能性が高い。
また、住宅物件以上にバブル傾向が鮮明だった土地市場も、ここに来て沈静化し始めたもようだ。南京市は11月17日、「購入制限」措置を導入してから初の土地入札を実施したが、9区画の落札総額は合計約88億元となり、最低価格からの上昇率は51%。これまでの300%超から落ち着きをみせた。
◆引き締め効果の持続に疑問符も、根本的なバブル対策が不可欠
ただ、これまでの住宅市場の過熱は、過去の緩和策を受けた“資産荒”(資金はあっても一定のリターンが見込める投資対象を欠き、資産配置に困る状況)を受け、ほぼ唯一値上がりが見込める不動産市場に大量の資金が流入しているためで、引き締め効果の持続性に関しては不透明が強い。かつての前政権時代に見られたような「引き締めを実施すればするほど、その反動で住宅価格が高騰する」という現象の再来を警戒する声もある。
中国社会科学院の都市・競争力研究センターの倪鵬飛主任は先ごろ開かれたセミナーの席上、今後1年間の住宅市場の調整を見込みながらも、その持続性には不確実性が存在すると指摘。住宅価格を高騰させているメカニズムが変わったわけではなく、引き締めの反動で一段の価格上昇を招く危険性があるとの認識を示した。また、JPモルガン中国の朱海斌チーフエコノミストも同じセミナーの場で、「不動産市場は過去10年以上にわたり、過熱、引き締めというスパイラルを繰り返す異常な状況下にある」と指摘。土地供給制度の改革や不動産税導入などの施策により、根本的な問題の解決を図る必要があるとした。一連の不動産引き締めは実際、旧態依然の内容であり、政府が資産バブル抑制に向けて抜本的な対策を打ち出せるかが、引き続き焦点となりそうだ。
◆トップ人事交代の中国海外発展、当面様子見を推奨=クレディスイス
なお、証券各社の直近リポートを見ると、中国恒大集団(
03333)に対してはシティグループが中立見通しを示している。8日のリポートで、1−10月の成約額が前年同期比105%増加し、当初の通年目標である3000億元を超えた点を評価。さらに、深セン上場企業である深セン経済特区房地産(
200029)との再編計画をプラスに受け止めた上で、目標株価を5.8HKドルに設定。「中立」の投資判断を付与した。また、UBSは18日のリポートで、雅居楽地産(
03383)の目標株価を4.26HKドルに引き上げ、投資判断を「中立」にアップグレードしている。
一方、15日大引け後に突然のトップ人事の交代を発表し、その後売られる展開となった中国海外発展(
00688)については、やや慎重な見方が目立つ。マッコーリー証券はこれまで多くの大型買収を主導してきたカク建民・執行取締役会長兼最高経営責任者(CEO)の辞任による影響を憂慮し、「仮に大型買収が途絶えれば、20年に成約額4000億元規模を目指すという同社目標の達成が難しくなる」と指摘。目標株価を23.89HKドルに引き下げ、「中立」の投資判断を継続した。また、クレディスイスは同社に対する「アウトパフォーム」の投資判断を据え置いたものの(目標株価31.8HKドル)、カク氏の突然の辞任には非常に驚いたとし、「同社が辞任の理由を明らかにしなかったことが不透明要素につながる」と指摘。状況がある程度明確になるまで様子見姿勢を維持するよう、投資家に助言している。